天城山(あまぎさん)は、日本百名山としても有名だが、実は幻想的な「苔の森」が広がる山である。今回は、苔のキャンパスに紅葉が広がる秋の天城山をレポートする。

■眺望がない!  百名山「天城山」とは

雨に濡れて色鮮やかな、紅葉の絨毯(撮影:兎山花)

 天城山とは、富士箱根伊豆国立公園内に位置する天城連山の総称である。万三郎岳(まんざぶろうだけ・標高1,406m)を最高峰とし、万二郎岳(ばんじろうだけ・標高1,299m)や遠笠山(とおがさやま・1,197m)他、外輪山や大室山(おおむろやま)などの側火山などからなるカルデラ火山である。

 天城山の頂上からの見晴らしは優れず、眺望はほとんどないのだ。しかし、眺望以上の魅力が秋の山には広がっていた。

■苔と神秘の森が広がる

岩に生える苔に、落ちた紅葉が可愛らしい(撮影:兎山花)

 天城山は年間降雨量が3000mmを超え、全国的にも雨の多い地域である。そのため苔などの植物が多く育ち、アセビやブナ林、アマギシャクナゲ、アマギツツジ、ヒメシャラの木などが茂る。アマギシャクナゲは伊豆半島固有種で、5月中旬から6月上旬の花の時期には、多くの登山者がシャクナゲの群生を見るために、訪れる。

幹肌の美しいヒメシャラの木(撮影:兎山花)

 筆者が天城山を訪れたのは2022年10月31日。登山口から万二郎岳までの登山道には苔が見事に生い茂り、登山道は色鮮やかな落ち葉の絨毯となり、幹肌が美しいヒメシャラの木がシンボルツリーのように聳え立っていた。

 天気は曇り空で、時折小雨が降る天気だったが、雨を受け苔は生き生きとし、苔の上に落ちた紅葉が辺り一面に広がっていた。その光景は神秘的で、まるでジブリ映画の『もののけ姫』の世界のように厳かであった。

紅葉の絨毯が広がる登山道(撮影:兎山花)