長野、新潟、富山、岐阜と広大なエリアにあまたの名峰が連なる北アルプス。多くの登山者があこがれるこの山岳エリアのなかでも、“北アルプス入門”と言われているのが、後立山連峰に属する唐松岳だ。長野県の八方尾根からゴンドラとリフトを使って登ることができ、山頂の山小屋やテント場で滞在もできる。また、八方尾根からのルートは尾根の途中に八方池があり、ここを訪れるだけでも満足度は高く、ここだけ往復するハイカーも多い。

■ゴンドラ&リフトで登山口にアクセス

山麓から「八方アルペンライン」に乗って標高1,830mまでアプローチ

 八方池や唐松岳へのアクセスは、山麓からコンドラとリフトを乗り継ぐ「八方アルペンライン」の利用が便利だ。リフト山頂に登山口があり、ごろごろと岩が転がる道を抜け尾根沿いにまっすぐ登る右回りコースと、木道が整備された登山道をゆっくり進む左回りコースの2ルートを利用できる。右回りコースのほうが最短で、八方池までの距離は1時間ほどだ。

八方池や唐松岳登山に便利な八方アルペンライン

 

■季節ごとの自然景観を楽しめる

リフト山頂から八方池までは歩きやすい遊歩道が整備されている

 八方尾根は高山植物の宝庫で春は多種多様な花が見られ、ハッポウウスユキソウやハッポウワレモコウなど、「ハッポウ」の名を冠する固有種もある。そして、秋の紅葉も見事で、9月中旬からダケカンバやナナカマドが赤や黄色に染まりはじめ、山々を美しく染め上げる。10月中旬頃になると山麓も木々が色づき、山麓から山へと向かうゴンドラの空中散歩では、燃えるような紅葉の森を眼下に見下ろせる。

 また、秋は空気が済んで遠くの山並みまで見渡せることが魅力で、南アルプスや富士山まで見えることもある。

■自然がつくった奇跡の「八方池」

水面に白馬三山が鏡写しになる八方池はぜひ見ておきたい絶景だ

 八方池があるのは、唐松岳へと延びる尾根の途中。窪地に雪解け水や雨水が溜まってできあがった、まさに自然が生み出した奇跡の池だ。景観がよく、間近に迫る白馬三山は、荒々しい岩肌から自然のパワーを感じる圧巻の存在。その山並みを鏡のように映す八方池は神秘的で、絶好のフォトスポットでもある。秋は周囲を赤や黄の紅葉が包み、絵葉書のようなうつくしい景色に入り込んだ気分になる。

絶景に出会える八方池

 

■周囲の山並みにも注目

後立山連峰の名をたくさん知れば景色を見るのがもっと楽しくなる

 八方池は白馬三山の景色に注目されがちだが、後立山連峰を山々はどれもすばらしい。写真は尾根の上から見た眺めで、右奥の三角のピークが白馬岳。左に続く杓子岳、白馬鑓ヶ岳が白馬三山だ。そこからさらに横に長く続く山塊が天狗尾根。そして左に連なるギザギザの峰が不帰ノ嶮だ。不帰ノ嶮は、Ⅰ峰・Ⅱ峰・Ⅲ峰と三つの峰から成り、最鞍部は「不帰キレット」と呼ばれる日本三大キレットのひとつだ。この急峻な峰の左に唐松岳があり、八方池から続く尾根を進むとその山に至る。ただし、八方池から先の唐松岳に至るコースは登山コースとなるため、本格的な登山装備が必要だ。