■【南のおすすめ】和歌山県田辺市「熊野古道中辺路」の起点となる美しきビーチ!

紀伊田辺駅から歩いて20分とかからない扇ヶ浜

 熊野古道の中核である「中辺路」が人気の和歌山県田辺市には、魅力的な低山がひしめきあっている。はじめて訪れたのは山が目的だったし、熊野古道も山から入ったため、田辺市に海があることを想像していなかった。ところが、初めて飛行機で紀伊半島南部の上空を通過したとき、この地域の複雑で美しい海岸線にくぎ付けになった。

 海にせり出した台地には南紀白浜空港がある。田辺湾には小さな島が点在し、引き潮時になると目立ってくる岩礁、そして白いビーチまである。表情豊かな海辺の風景だ。観光地の目玉となっている天神崎や、田辺市内を間近に眺められる日和山、鳥巣半島、元島や神島などなど、人を惹きつける自然資源に事欠かない。

 広範囲に点在する魅惑の名所の数々を「一筆書き」で繋いでみようと、田辺市の海岸線のほとんどを歩いたことがある。距離にして20kmほどの、とても楽しい歩き旅だった。

天神崎に見られる岩礁。潮が引けば、この通りに遊べる磯となる

 紀伊田辺駅から歩いて20分とかからない扇ヶ浜は、熊野古道中辺路に入る前に海水で穢れを祓う「潮垢離」の舞台だった浜だ。垢離(こり)とは、穢れを祓う行為のこと。水で清める「水垢離」のほかに、田辺ではお湯で清める「湯垢離」と海水で清める「潮垢離」があるのだ。

 海面がいまより高かった時代は、もう少し内陸側に垢離の浜があったようで、江川地区の児童公園には、その名残を「潮垢離浜跡史跡」として伝えている。そんなことを知ってから、ぼくは中辺路を歩く前に必ずこの扇ヶ浜で海水に触れることにしている。