■NG行為5 薬に頼りきる

 高山登山の際に見逃せないポイントが「薬の使用」だ。市販の頭痛薬や吐き気止めを服用すれば、高山病の症状を一時的に緩和できるが、過信は禁物だ。なぜなら、薬による症状の緩和は完全ではなく、また効果も時間経過とともに薄れるためだ。

 下山中で、車や交通機関に自力でたどり着ける状況で、一時的に症状改善などのために薬を使うのならばまだよい。しかし、登山出発前での「薬があれば安心」という考えは、単に「症状の先送り」に他ならない。麓から遠く離れた場所で高山病の症状に襲われれば、救助がしづらく命の危険を高める行動となってしまうのだ。

 初心者がまず考えるべきは、高山病の症状を起こさないよう、標高の上昇に対応できる適切な呼吸法やペース配分、適切な水分補給と疲労物質の排出といった「基本的な対策」。

 仮に、登山中に高山病の症状が現れたとしても、対策をとっておけば重症化を防げる可能性が高い。薬があるから高山病の症状が出ても大丈夫と考えるのではなく、基本的な対策を行ったうえで、それでも症状が出たときに薬を服用するという考え方が重要だ。

 高山病の基本的な対策を行い、安全に留意したうえで存分に高山登山を楽しんでほしい。