7月より山開きが始まり、本格的な登山シーズンを迎えた富士山。せっかくだから一度は登っておきたいと考える人が多いだろうが、富士山は日本一の標高を誇る山である。無理な登山は思わぬ事故を招く。せっかく訪れたのだからといって、危険な状況の中で登山を強行することは、絶対に避けなければならない。

 そこでこの記事では、富士登山に3回挑戦し2回引き返す経験をした筆者が、絶対に登ってはいけない3つの状況について紹介する。

■悪天候での登山

登山道では目前に雲が迫る(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 悪天候の中、あるいは悪天候になることが予想される状況下では、登山を取りやめて引き返すべきだ。富士山の天気は非常に変わりやすい。登り始めたころは晴れていたのに、突然雲に覆われるという状況は決して珍しくはない。また、周囲に遮蔽物が存在しないため、いきなり強風が吹き荒れることもある。

 先へ進むのが困難な状況だと判断した場合には近くの山小屋へ避難するか、下山を決断することを推奨する。特に注意したいのが雷だ。富士山では自分の目前の高さで雷が鳴ることもある。そして登山道は開けた尾根や斜面の上にあるので、自分が目標物となって誘引した雷が落ちて来る可能性も非常に高い。

視界が奪われることも珍しくない(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 雷が鳴ったら、近くの山小屋に避難するしか回避する方法はない。筆者も9合目付近で雷鳴を確認したため、直ちに下山を開始した経験がある。雷が鳴りそうな時にはできれば登山を中止して下山を開始することを推奨する。

■高山病発症後の登山

登山道では高低差がとても大きい(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 富士山は3,000mを超える高山であり空気が薄いため、高山病を発症する可能性がとても高い環境下にある。高山病を発症すると、眠気、頭痛、吐き気などの症状が出る。症状が重くなると自力で動けなくなるばかりか、最悪の場合、死に至るおそれもある。

3,000mを超える高さの富士山(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 筆者も一度登山中に高山病を発症して、それ以上登ることが困難になった経験がある。せっかくの機会に仲間に迷惑をかけることを申し訳なく思ったが、その際は同行していたパーティーが快く下山を受け入れてくれた。

 誰かと一緒に来ていると、申し訳ないという思いから不調を訴えにくいかもしれない。しかし、自分の身の安全が最優先だ。もし高山病の疑いのある症状を感じた場合には、遠慮せず素直に言い出してほしい。そしてこれ以上は登れない旨を伝えて、休憩を重ねながら下山しよう。