■【神奈川県・渋沢丘陵】湘南、箱根、丹沢、富士。神奈川の代表的景観が全部ある!

渋沢丘陵から眺める丹沢山地。小さなベンチが嬉しい

 神奈川県の秦野市は、北に丹沢山地、南に大磯丘陵を擁する神奈川県唯一の盆地である。四方の山から水の恩恵を受け、湧水がとても多い。それゆえ古くから人が暮らし、人が行き交う交通の要衝地だった。現在では東名高速道路、新東名高速道路、国道246号線、そして小田急電鉄が通る。

 その南の大磯丘陵の一端にあるのが、渋沢丘陵だ。里山の風情を多分に残すトレイルには農地や雑木林がたくさんあり、ときおり通過する集落では丘陵地の暮らしの様子を感じることができる。道中からは湘南方面に江の島、相模湾に伊豆大島、箱根と丹沢の山々、そして富士山の眺めまで楽しめるとあり、ここを歩けば神奈川県を代表する景勝地を巡ることができるのが魅力。

里山の風情を多分に残すトレイル

 渋沢丘陵には最高地点の八国見山(319m)と頭高山(303m)という2つの低山があり、そのどちらにも特徴があって楽しい。

 たとえば八国見山は、その名の通り「八つの国を眺められる山」のことで、かつてここからは駿河・伊豆・相模・甲斐・武蔵・安房・上総・下総を望むことができたそうだ。頭高山は、渋沢丘陵の西端にあたる小さな山で、八重桜の名所として名高い。特産の桜の塩漬けは、全国1位の生産量である。

 小田急電鉄・秦野駅をスタートしたら震生湖から渋沢丘陵に入り、これらの八国見山と頭高山を経て、同・渋沢駅をゴールにする約13kmのコースがいいだろう。ここも公共交通機関で計画できるため、仕上げに一杯できるのが嬉しい。

渋沢丘陵は道案内がしっかりしている。とはいえ道標だけに頼りきらず地図も持ちたい

 渋沢丘陵を歩く場合、駅と最高地点の比高が200mほどのなだらかな道のりとなる。案内板もあり、道迷いするリスクはとても低い。唯一不安な場所があるとしたら、途中の栃窪集落の通過と頭高山に入り組む歩道だろうか。よく地図を見て行動することを心がけたい。

 じつは、このあたりは矢倉沢往還という古道の通る場所でもあり、道中にその道標を見つけることができる。表丹沢の名山・大山(おおやま)を目指す参詣道「大山道」とも重なる区間なので、いにしえの旅人や参詣者もここを歩いた歴史のある道。そう思うと、ちょっと胸が熱くなる。

 そういえば、お隣の伊勢原市には伊勢神宮の分祀が、こちらの秦野市には出雲大社の分祀があることも、なんだか興味を興味をそそられる。時間があれば、ぜひお詣りに立ち寄りたい。

<低山トラベラー厳選。渋沢丘陵周辺の立ち寄るべきスポット>
・【和食】渋沢駅前の「いろは食堂」が◎
・【洋食】渋沢駅から少し歩くけど「レストランルージュ」が美味しい
・【神社】秦野といえば、出雲大社相模分祠。秦野駅には副駅名の看板がついている
・【温泉】秦野駅なら「はだの・湯河原温泉 万葉の湯」
・【温泉】鶴巻温泉駅まで電車移動して「弘法の里湯」も◎
・【追いハイク】歩き足りない人は、弘法山~吾妻山まで、もうひと丘陵!