■おすすめ自然体験その3「河原の石をひっくり返す」

 春から初夏にかけて、日本の森林はさまざまな野鳥の鳴き声でにぎわう。その中には海を越えて日本にやってくるキビタキやオオルリ、コマドリなどの夏鳥の姿も少なくない。多くの場合、鳴いているのはオスで、縄張りを作ってメスとつがいになり、子育てをする。

 では、なぜ野鳥たちは海を越えてわざわざ日本にやってくるのだろう。それは、日本にカゲロウやトビケラなどの飛翔性の昆虫が大量発生し、野鳥の子育てに十分な量の食べものが確保できるからだ。夏に大発生するそれらの昆虫たちは、冬の間は幼虫として水中で生活している。あるものは落ち葉が溜まった場所にいるし、あるものは石の裏にいる。川に行ったら安全を確認し、浅瀬の石をひっくり返してみてほしい。まだ少し小さめだが成長途中のカゲロウ、トビケラ、カワゲラなどの幼虫が濡れた石の上を這う姿を見ることができるだろう。

石の裏にいたカワゲラの仲間の幼虫

 しかし、幼虫はわずか数ミリしかないので手で捕まえることは難しい。100円ショップなどで購入した筆を使って、水を張った容器などに落として観察してみよう。じつにいろいろな種類の幼虫が石の裏に潜んでいることがわかるだろう。ちなみにカゲロウ、トビケラ、カワゲラだけでなく、トンボの幼虫(ヤゴ)、サワガニやエビ類なども見つかるかもしれない。

 上流のきれいな川と、生活排水などが流れ込んで水質が変化した中流や下流の河原では、棲んでいる水生生物が異なる。それゆえ水生生物は川の水質を評価する指標生物でもある。詳しくは環境省のページにモニタリングの方法と捕まえ方などが載っているので、興味のある方は参考にしながら観察を楽しんで欲しい。

水生生物による水質評価マニュアル

 今回は雪山に行かずとも、都市公園や河川敷など、身近な場所で冬の自然を楽しめる「生きもの観察」について紹介した。次回は動物の痕跡に注目したいと思う。