きれいな水があるところに銘酒は生まれる。長野県諏訪市は、そんな銘酒づくりにふさわしい水に恵まれ、いくつもの酒蔵が存在している。

 同市の上諏訪駅から徒歩15分圏内に銘酒の五蔵が建ち並び、散歩がてら試飲ができるということで、甲州街道沿いを歩きながら巡ってみた。

■銘酒が生まれる諏訪の地

真澄の蔵元ショップ「Cella  MASUMI」(セラ真澄)店頭に飾られている杉玉(撮影:ヒラマツアユコ)

 長野県の中央に位置する諏訪市は、夏は花火大会、冬は御神渡りで知られる諏訪湖や、豊富な湯量を誇る上諏訪温泉、日本百名山にも数えられている霧ヶ峰高原など、多くの人気スポットを有している。

 なかでも「御神渡り」は、諏訪市の無形民俗文化財に指定されている特殊神事で、神秘的な様が多くの人を魅了する。御神渡りとは、諏訪湖が全面結氷し、湖面の一部が盛り上がる自然現象。南岸から北岸へと連なる、山脈のような形になる。

 「諏訪大社の上社の男神が、下社の女神のもとへ通うための道」という、なんともロマンチックな言い伝えがある。御神渡りは地元の八剱神社の神宮が認定し、湖面の割れ目の状態を見て、その年の農作物や気候、社会情勢までも占うという。

 近年は暖冬の影響でなかなか見ることができず、2018年に約5年ぶりに出現したきりとなっている。しかし、今年は「厳しい寒さが続いているため、御神渡り出現が期待できる」(2023年1月7日時点)と言われており、楽しみだ。

 また、霧ヶ峰高原は標高約1,600m、日本百名山にも数えられている名所。レンゲツツジやニッコウキスゲ、マツムシソウなど高山植物が楽しめる。富士山やアルプス、八ヶ岳連峰などが一望できることも人気スポットの所以。そして、この霧ヶ峰の伏流水で造られているのが、諏訪五蔵の銘酒なのだ。

■「ごくらくセット」で諏訪五蔵 酒蔵めぐり

巾着、グラス、スタンプカードがセットになった「ごくらくセット」(撮影:ヒラマツアユコ)

 上諏訪駅を出ると、目の前を走る甲州街道。右手にまっすぐ進んでいくと、わずか400mの間に5つの酒蔵が密集しているエリアに辿り着く。この五蔵を巡って試飲ができるのが「諏訪五蔵 酒蔵めぐり」だ。

 「酒蔵めぐり」を行う際は、まず各酒蔵か諏訪市観光案内所で販売されている、巾着、グラス、スタンプカードがセットになった「ごくらくセット」(2500円)を購入する。

 「ごくらくセット」を利用しての酒蔵めぐりは、コロナ禍前とはだいぶ様相が変わった。以前は「ごくらくセット」に付いてくるグラスを片手に蔵をめぐり、お店の人がお酒を注いでくれ、試飲用のお酒が用意されている蔵もあれば、好きなお酒を選んで試飲できる蔵もあった。

 現在は、店頭で渡されるコインをサーバーに投入し、自分で注いでから試飲ブースで飲む形式となっている。

 試飲をする際は、スタンプカードを提示し、プラカップがセットされたトレイとコインを受け取る。サーバー右側のコイン投入口からコインを1枚入れて、季節限定のもの、定番ものが4〜5種セットされたなかから試飲したいお酒のボタンを押すと、定量(約20ml)がプラカップに注がれる仕組みだ。

 1杯20mlとはいえ5軒も巡ったら、酔いがまわってしまう人もいるだろう。そんな人のために用意されているのが、「試飲をする」か「ワンカップをもらう」かの選択肢。「もうこれ以上、飲めない……」となった場合は、ワンカップを持ち帰ることができる。