■とにかく、朝寝坊に注意!

お客さんのお見送りの後は、ぼーっと富士山を眺める。さて朝ごはんにするか

 山小屋が建つ場所は2,521mと標高が高いので、ご飯は圧力鍋で炊く。着火してから1時間ほどしたら、圧を抜いて少し蒸らす。そうすると、ふっくら美味しいご飯が炊ける。

 シーズン当初、朝ごはんは5時からだった。夏山シーズンの5時というと、太陽が顔を出すよりも前。空が色づく一番きれいな時間だ。晴れた日には朝ごはんを食べながら眺める食堂からの景色が素晴らしいけど、途中からはこの美しい時間帯にご飯食べてる場合じゃないでしょ、と思い始めた。

ある日のスタッフの朝ごはん。余ったごはんになりがちだから、ホットケーキはご馳走

 せっかくなら外に出なくちゃ。ということで、夏のあいだ1ヶ月は、朝ごはんの時間を4時に変更することにした。「さっき寝たばっかじゃないっけ?」と思いながら、まだ真っ暗な3時に起きる。屋根裏にあるスタッフ用の部屋からノソノソと下りていき、開いているのか閉じているのか自分でもわからない瞼を無理矢理開けて、コンロのつまみをひねる。それができたら安心。ご飯さえ炊ければ大丈夫だ。

 朝ごはんは、白米には梅干しをのっけて、お味噌汁、煮魚ともちふの卵とじという、至ってシンプル。寝坊が一番恐ろしいからな。早出の人には、夜のうちにおにぎり弁当を渡している。夕飯の後にせっせと握る。

 朝ご飯の後は、お見送りと片付け。それらが終わって、やっとスタッフの朝ご飯の時間になる。大体6時半から7時くらい。その時間になると、さっき顔を出したばかりだと思っていた太陽も、だいぶ上の方に上がっている。ご飯を食べて、お腹が満たされたらテラスで朝寝。陽が当たってポカポカ気持ちいい。

 しかし、この幸せな時間は長くは続かないのであった。