■さあ“坊主めくり”を始めよう

 落ち葉をめくって幼虫たちを探す前に、まずはエノキの葉を見分けるところから始めよう。

エノキの葉の特徴は、葉の基部から3本に分かれる葉脈があることだ
クヌギ(上)、コナラ(左下)、エノキ(右下)の太く目立つ葉脈を見比べてほしい。エノキ以外は、太い葉脈は中央に1本走るだけだ

 エノキには、他の多くの葉と違う特徴がある。太い葉脈が葉の基部からはっきりと3本に分かれてまっすぐ先端に向かって伸びている。身近に見られる葉と比較すれば、その特徴は明らかだ。

 エノキの葉を見分けられるようになったら、いよいよ葉っぱの“坊主めくり”に挑戦だ。しかし、前述したとおり、いきなりエノキの根元に足を踏み入れれば、オオムラサキの幼虫たちを踏みつけてしまいかねない。まずは、幹から1~2m位離れた葉から一枚一枚めくっていこう。

葉っぱをめくる瞬間のドキドキ感がたまらない

 最初は、慣れずになかなか見つけられないかもしれない。しかし、粘り強く徐々に核心部に迫っていこう。その頃には、他人の目を気にすることもなく四つん這いになって夢中になっていることだろう。寒さを忘れて熱くなっているはずだ。

幹の根元周りが最も確率が高いゾーンだ。特に幹の北側に多い

 ふと気がつくと、さっきめくったはずの葉っぱをまためくっている。“坊主めくり”だったはずが、いつの間にか“神経衰弱”になっていることもしばしば。まあ、どちらもお正月遊びには違いないからそれも良し。

枝の股になっているところも重要なポイントだ

 見逃してはならないのが、枝の股の部分にたまった落ち葉だ。幹から下りてきた幼虫は、そこに落ち葉があれば、「地面に下りなくても、ここでいいや。」と思うのだろうか。意外とよく見つかる。越冬場所を探すには、彼らの気持ちになってみるというのが近道なのかもしれない。

■発見! コアラ顔のキュートな幼虫たち

 エノキの根元の葉をめくっていくと、頭が2つに分かれた2センチほどの茶色い幼虫を見つけることができるだろう。背中に同じくらいの大きさの突起が4列ついていれば、国蝶オオムラサキの幼虫だ。

大きな2本の角をもったオオムラサキの幼虫
茶色で背中の突起の大きさが揃って4列ついていればオオムラサキだ

 しかし、オオムラサキには、自然度がかなり高くないとなかなか出会えない。年々生息地が減っているとも聞く。その代わり、都市の公園でも比較的見つけやすいのがゴマダラチョウやアカボシゴマダラの幼虫だ。アカボシゴマダラは、人の背丈ほどのエノキの幼木で見られることが多い。

灰褐色で、丸みを帯び、背中の突起が3列なのがゴマダラチョウ
夏のアカボシゴマダラ。背中の突起は不規則。越冬中は、ゴマダラチョウなどと同じように茶褐色に変化している
30分余りで4匹の幼虫を発見。右がゴマダラチョウ、それ以外はオオムラサキ
別の場所では、ゴマダラチョウだけが見つかった

 大きな角は、天敵であるアシナガバチに襲われた時に使用する伝家の宝刀らしい。そんな武器を持ったオオムラサキやゴマダラチョウたちだが、その顔はとってもキュート。

まるでコアラそっくりなゴマダラチョウの顔。このまま人気キャラクターになれそう
よく見ると、3つの目がくっついて縦長になっている。これがチャーミングポイントなのかも?

 こんな顔を見てしまえば、もうぞっこん。完全に虜となってしまうはずである。ぜひ、読者の皆さんも、冬の公園へ彼らを探しに行ってほしい。

 最後に。エノキの坊主めくりを楽しんだ後は、落ち葉を元のように戻しておこう。もちろん、オオムラサキやゴマダラチョウの幼虫は持ち帰らずにその場でリリースだ。特に公園では、条例等で昆虫採集が禁じられているところが多いので要注意。また、発見場所は公にしないことがマナー。貴重な生息地は大切にして、エノキの坊主めくりをいつまでも楽しめる持続可能な場所としたい。夏に成虫となった彼らに再び出会うことを願って。