■朝イチは絶好調! 美しい流れが気持ちいい釣り場を堪能

 取材を兼ねて釣りに訪れたのは11月の終わりだった。朝の気温6℃、水温11.5℃。紅葉の山肌が朝日に照らされて赤く染まっている。川面にも部分的に日が当たり出しているが、まだ陰の部分は薄暗い。このチャンスを逃したくない。運転の疲れはあるが、さっそく釣りを開始する。

採石場につながる「鉄板橋」。無骨な橋梁はどこか海外の釣り場に来た雰囲気

 まずは簡単に川見を済ませ、「鉄板橋」の上流へ入渓することにした。緩急のリズム感がある流れの雰囲気は申し分ない。ただこの時期だからなのか、全体として浅い印象だ。はやる気持ちを抑えつつ、初めての場所だけに水生昆虫の様子を入念にチェックする。なかでも目立っていたヒゲナガカワトビケラのラーバ(幼虫)を模したフライ(毛鉤)をティペットに結ぶ。

 「果たして本当にニジマスが入っているのか?」半信半疑でフライを流していると、瀬の中からチェイスしてきた魚がゴボッと顔を見せた! 魚がいることはわかった。しかもなかなかいいサイズだ。運よくフライには触っていない。ひと呼吸おいてもう一度同じコースを流すと律儀にフライを咥えてくれた。

開始早々釣れたニジマス。見事なプロポーションで感激もひとしお

 ロッドは10ftの4番、ティペット(ハリス)は4X(1号)。その先につながるニジマスは、元気いっぱいでグングン走る。なんとか寄せてきたが、ランディングネットを出した途端にまた走られる。ここでバラしてガッカリする(お決まりの?)展開は嫌なので、楽しみたい気持ちを抑えて、とにかく細心の注意を払ってやり取りしたおかげで無事ネットインした。流線型の魚体が見事な54cmのオスだった。

■2匹目の“ニジマス”! 満たされた気分でラインを伸ばす

2本目はボリュームのある砲弾型のニジマスだった

 少し下ってから、味をしめて(先ほどと)同じようなリズムで構成されたポイントを攻めてみる。ターンさせたフライを浮かび上がらせるように引くと、わずかに魚が追ってくるような違和感を感じた。もう一度流して同じ動きをさせると今度はアタリがあるが乗せられない。さらに同じコースを……。本当にまた来た! サイズは一匹目より小さくなったが、ボリュームのある魚体。朝の光に輝くニジマスは美しかった。

 早朝こそ冷えて川霧が立ち込めていたが、徐々に気温が上がってきた。秋の日差しに照らされてポカポカと暖かい。まるで夢見心地。もう十分かもしれない。早くも満足してしまったので、あとはさらなる大物を求めて場所を移動することにした。

夕方、ライズに期待したが静かに暗くなっていった(完全に暗くなってからの起きたかも?)

 その後、長距離移動の疲れもあって仮眠し、気づくと時間は正午を過ぎていた。水温は14℃まで上がっている。何度かアタリがあるが、朝のような気前良さはなかった。日が傾くにつれ、徐々に虫たちが増え流れの上を飛び交っている。期待していたライズはなかったが、暮れゆく里川の風景を眺めながら、満たされた気分でラインを伸ばした。