登山は幅広い年齢層に親しまれている趣味の一つ。季節ごとに移ろう景色や、動植物を眺めながら、自然の中を歩くのはなんとも気分がよく、山頂へ到達する達成感もある。
しかし、忘れてはならないのは「登山は危険が隣り合わせ」ということ。登山中の滑落、ケガ、遭難などはパニックを引き起こし、とくに登山初心者は冷静な対応ができなくなるケースも多い。
今回は、筆者が実際に遭遇した登山中の事故から、登山トラブルへの対処法を解説する。
■滑落し道を失った際に「沢に降りてはならない」理由
筆者は「下山中に日が暮れ、滑落し登山道を見失う」というトラブルに遭遇した。斜面を転げ落ち、道を見失い、周囲が暗闇に包まれた状態を想像してほしい。こうなると、人は容易にパニックに陥り、とにかく早く下山したい気持ちから、低い場所へ移動しようとする。
さらに、このような状況下では「水は低い場所へ流れる」という知識こそが、沢を下る最悪の決断を生むのだ。
結論を言えば、山の中で沢に沿っての下山は危険極まりない行為だ。
沢は、崖や岩場といった、急峻な地形に行き当たる可能性が高い。沢に限らず、山中の岩場は岩が転がったり、滑りやすい岩を踏んで捻挫するなどの事例が後を絶たない。沢の水や濡れた岩がさらに危険であることは明らかである。
滑落し道を見失ったときは、身体にケガなどの異常がない限りは、下山したい気持ちをおさえ、山頂を目指すべきである。本来の下山道を外れて下山した場合、到達するのは山を取り囲む広い裾野の「どこか」。しかし、山頂に到達できれば、再度整備された下山道に戻ることができるため、それが最善の策と言える。
危険な沢下りで下山するよりも、山頂を目指すべき理由はここにあるのだ。