■下山時に注意、転倒しない歩き方とは

筆者が実際に滑落した羊蹄山。下山時は加速が加わり転倒しやすい(撮影:尾野雄一)

 先の筆者の事例においても、滑落は下山時の転倒から発生した。下山時は気も緩みがちで、ケガを負いやすい。

 転倒からケガや滑落につながると、筆者のように、さらなる困難な状況に陥る可能性が高い。まずは下山時の「転倒しない歩き方」を覚えることが大切だ。

 下山時は体重が徐々につま先に向かい、前傾姿勢になる。そこに前傾姿勢と荷物の重みによる加速、足の疲労と気の緩みが加わり転倒してしまう。下山時はまず、体重を後ろ足にかけ、前傾姿勢にならないように背筋を伸ばし、歩幅も気持ち小さめを心がけよう。

 また、木の根や岩などをまたぐために大股になる際は、必要に応じて斜面に対して横歩き(カニ歩きのように斜面に対して身体を横にする)を活用するのもよい対策方法だ。

■転倒し、捻挫してしまったときは

 どれだけ気をつけていても、転倒しケガをしてしまう可能性はゼロではない。特に単独登山中に捻挫をしてしまうと、焦りや孤独感からパニックを引き起こしやすい。

 しかし、低山において「自分だけが登っている」状況はまれである。追い越した登山者はすぐに追いつき、先に登った登山者はやがて下山してくる。

 とはいえ、ケガした際に完全に他の登山者頼みも適切ではない。初心者、熟練者を問わず、一人で登ることは極力避けるべきである。登山前には必ず「登山計画書」を提出しよう。救助を要請したり捜索が行われるとき、登山計画書は救助隊が登山者の人数や位置を推定するのに役立つ。

 また、家族や友人、職場などに登山の予定を話しておくことも有効だ。