宿泊が伴う山行や遠距離の移動はなかなかできない……。だから都市部から近く、そしてできるだけ有名な山に登りたい。ここではそんな欲求をかなえる日帰り可能な百名山の中から、比較的登りやすい山々を紹介しよう。

 ロープウェイやシャトルバスを使って標高を上げられて、整備された登山道で鎖場や岩場などが少なく、行程時間も5~6時間未満。それでいながら眺望抜群かつ、新緑や紅葉など四季の景色も美しい山をピックアップ。標高2,000~3,000mの山まで、それぞれ個性あふれる山を今年は歩こう。

●日本百名山とは?

 随筆家で登山家の深田久弥が、実際に登った山から選んだもの。それらは山岳紀行『日本百名山』に掲載されている。高い山だけが選ばれているわけではなく、山の歴史や個性、品格などを見て選定されている。100座制覇を目指す“百名山ハンター”と呼ばれる登山者もいるほど。

■乗鞍岳(のりくらだけ)標高:3,026m【長野県】

歩行時間:2時間45分 
技術レベル:★☆☆☆☆ □体力レベル:★☆☆☆☆

 北アルプスの最南端に位置する乗鞍岳の主峰・剣ヶ峰(標高3,026m)へはシャトルバスで畳平(標高2,763m)まで上がってから登り始めるため、実際の登山標高差は300m弱しかない。そのため、手軽に登れる3,000m峰としても有名だ。 

 畳平までは長野県側の乗鞍高原観光センターより、シャトルバスで向かう。乗車時間は1時間余り。一帯は自然保全目的で車両の乗り入れが規制がされているので、マイカー利用の際もシャトルバスへの乗り換えが必要だ(※岐阜県側からのアクセスである乗鞍スカイラインは、2023年の開通予定はありません)。

 バスターミナルを周辺には魔王岳、大黒岳、富士見岳とそれぞれ10分ほどで行ける山のピークがあり、ここからでも見ごたえ十分の景観が広がる。一気に標高を上げているので、高度に体を慣らしてから出発しよう。

 乗鞍岳山頂へは、畳平から肩の小屋経由で約90分。不消ヶ池を右手に見ながら整備された道を登っていく。肩の小屋を過ぎると斜度はきつくなり岩礫状の道となる。登り切ると祠がある剣ヶ峰に到着。

山頂部は森林限界だが、その下の木々は紅葉が鮮やか

 晴れた日は目の前に御嶽山、北アルプスの秀峰槍ヶ岳や穂高連峰、中央アルプスが近くに迫り、遠く南アルプスや八ヶ岳の峰々まで一望。圧倒的な景観を堪能できる。下りは登ってきた道をそのまま戻る。

 なお、標高差はたった300mしかないが、3,000m峰の稜線なので、風が吹けば寒くもなり、天気の急変や麓との気温差などを考慮して十分注意して登りたい。

天気が良ければ山頂からは穂高連峰や槍ヶ岳が見える