北海道の羅臼町は知床半島の東側に位置。羅臼岳の山麓に広がり、根室海峡に面して漁港が開かれた、山と海の地形がもたらす海産物に恵まれた地域だ。世界自然遺産「知床」を楽しむ観光拠点のひとつとして知られる羅臼町だが、歴史を紐解くと先史時代から人々がこの地に暮らし、独特な文化を作り上げてきたことが分かる。その歴史がわかる羅臼郷土資料館の魅力に触れつつ、海の幸や温泉など観光情報についても紹介していこう。
■出土した土器からわかる羅臼の歴史
羅臼郷土資料館は、かつて小中学校として使われていた建物を再利用したもの。下駄箱のある昇降口が資料館の入口だ。館内は、出土した土器などが集められた「第一考古展示室」やアイヌ文化の生活用品が並ぶ「重要文化財展示室」など、テーマごとに展示室が分かれている。予約すると学芸員が詳しい解説をしながら展示室を案内してくれる。
■北海道は、縄文時代が本州よりも長く続いていた?
学芸員の説明よると、日本列島では、採集や漁労、狩猟が暮らしの主体だった縄文時代に続き、稲作が伝わって弥生時代がはじまるわけだが、稲作に適さない北海道では弥生文化が広まらず、縄文文化の伝統がさらに発展した続縄文時代という独自の文化が形成されたのだという。
また、ヘラでひっかいたような模様の土器が見られる擦文文化と、オホーツク海沿岸には波模様を貼りつけた土器が特徴のオホーツク文化の異なる文化が同時代にあったというから興味深い。そして展示されている出土品の土器には、形状は擦文文化なのに模様はオホーツク文化というものも見られ、2つの文化が合わさっていったことが想像できる。
■ヒグマやシャチは、太古から生活用品のモチーフに
重要文化財に指定されている松法川北岸遺跡から出土した遺物は、7~8世紀ごろの竪穴式住居が火災によって炭になったことで奇跡的に当時の生活用品が残されたもの。なかでも見どころは、熊の頭を模した容器の「熊頭注口木製槽(くまがしらちゅうこうもくせいそう)」だ。器の縁にはシャチの背びれの模様も刻まれており、ヒグマやシャチを神と崇めるカムイの文化に通じるものを感じる。この熊の頭の容器は焼け残った実物とは別に、復元したレプリカも展示されている。
羅臼郷土資料館があるのは羅臼町から根室中標津空港に向かう途中の峯浜エリア。知床羅臼の観光を楽しんだあと、空港に戻る道すがらにでも立ち寄って、北海道で独自に発展した歴史と文化に触れあってみてほしい。