「金魚のまち」で知られる奈良県大和郡山市は、使わなくなった自販機を金魚用水槽に改造して商店街に観賞用として設置したり、用水路で金魚を飼うなど、金魚にまつわるユニークな取り組みを多彩に展開している。

 金魚すくいの技術を磨く「道場」もあり、子どもや観光客が連日にぎわうのも、この街ならではの特徴。店内に金魚水槽を置く飲食店も多い。

 この地の金魚は江戸の武士が副業で養殖し、栄えていったという側面もある。一方、地域のシンボル「郡山城跡」は今年6月、新たに「国史跡」に指定されることが決まり、金魚と合わせた地元観光の活性化に向けて、地元では期待が高まっている。

 今回は「金魚」にまつわる地域の取り組みや歴史、そして「郡山城跡」の観光の魅力を紹介する。

■日本屈指の金魚の産地

 大和郡山市は金魚の「日本三大産地」の一つで、全国的にも知られている。しかし、この地で養殖を始めたのが武士であったことはあまり知られていない。

 一説によると江戸末期、郡山藩の藩主だった柳沢吉里が甲斐の国(現在の山梨県)から金魚を持ち込んだのを機に、下級武士による内職として養殖が始まり、この技術が明治初期にかけて周辺の農家に伝えられた。藩では年貢米の凶作が続き、武士たちの生活が苦しかったことも背景にあり、藩主が内職として金魚の養殖を奨励したこともあり、この地での広がりを加速させた。元々、水上運送が便利な地であったことにも後押しされ、その後、日本の主要産地へと発展を遂げたといわれている。

■「金魚が泳ぐ」ユニークな商店街

使わなくなった自動販売機でも金魚が泳ぐ(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 近鉄電車「郡山駅」から徒歩5分の柳町商店街は別名「金魚ストリート」と呼ばれる。マンホールや橋の欄干(らんかん)をはじめ、あらゆるものが金魚をあしらったデザインで装飾され、まさに「金魚だらけ」と言っても過言ではない。

 そして驚くのが、生きている金魚を使った大胆な展示だ。自動販売機を改造した水槽で金魚を飼うなど、個性的な水槽が各所に置かれ、約600mの通りは観光客らを楽しませる演出でいっぱいになっている。

 このストリートにある約30店で、珍しい形のものや色鮮やかな品種など、さまざまな種類の金魚を観賞できる。飲食店などの店内にも当たり前のように水槽が置かれているが、この街を観光していると次第に「金魚三昧」にも慣れ、不思議な感覚になる。

旧城下町を流れる紺屋川にも金魚が泳ぐ(写真提供:大和郡山市観光協会)

 また、地域に残る城下町の水路として流れる「紺屋(こんや)川」にも金魚が泳ぎ、足を止めて金魚を探す観光客の姿も。

 ほかにも「金魚資料館」や、オリジナルの金魚グッズを販売する雑貨店など、地元における金魚の存在感の大きさは計り知れず、評判通りの金魚のまちらしさを感じさせてくれる。

■金魚すくい道場「こちくや」

「金魚すくい道場」がある「こちくや」は連日、多くの人でにぎわう(写真提供:大和郡山市観光協会)

 「金魚すくい」といえば夏の風物詩だが、大和郡山では年中楽しめる。金魚をデザインした小物やグッズ販売を手掛ける「こちくや」では店内に「金魚すくい道場」を併設。地元の子どもだけでなく、観光客も金魚すくいに挑戦し、多くの人で賑わう。ホームページによると、この道場の門下生は400名を超えるという。

金魚のまち大和郡山市では「金魚すくい大会」も大盛況(写真提供:大和郡山市観光協会)
子どもも真剣に「金魚すくい」に挑戦(写真提供:大和郡山市観光協会)

 また、金魚のまちということもあって、市内では金魚すくい大会も盛んに行われ、地元の体育館やショッピングモールを会場に「猛者」たちが競い合っている。