日本アルプスの北部に位置する飛騨山脈は標高3,000m級の日本を代表する山々が連なる。一般的には「北アルプス」という呼び名で親しまれ、世の登山者憧れの山脈だ。ここには日本の標高第三位の奥穂高岳(標高3,190m)や槍のように尖ったピークが象徴的な槍ヶ岳(標高3,180m)をはじめとした、日本屈指の高山が多い。それぞれのピーク同士は繋がっていて、どこまでも続く荒涼とした稜線はハイカーの心くすぐる光景だ。

 主だった山の頂上は森林限界を超えているので山上からは大パノラマが望め、これぞトレッキングという眺望。景色だけでなく、色とりどりの高山植物が咲き誇るお花畑や夏でも溶けない雪渓など北アルプス特有の山歩きも出来る。そんな魅力溢れるエリアにおいて、今こそ登りたい!と熱く推薦する山を編集部が厳選して6座をピックアップ。1座ずつ全6回の連載としてお届けする。第4回目は、登山者にとって登りたい山第1位の「槍ヶ岳」。自分のレベルに合わせてこの夏、チャレンジしてほしい。

■[長野県]槍ヶ岳(やりがたけ) 標高:3,180m   行程:1泊2日

歩行時間:17時間
技術レベル:★★★★☆
体力レベル:★★★★☆
【オススメポイント】
1.北アルプスのシンボルであり登山者にとってあこがれの山
2.山頂からは大パノラマ
3.槍の穂先の鎖とはしごの連続

●人気第1位の山

 天を貫くような独特の山容が特徴の槍ヶ岳。標高3,180mと国内第5位の標高ながら、登山者にとっては登りたい山ランキングで毎年堂々の1位を獲得し続ける、富士山よりも人気が高い山となっている。

 山頂の肩には槍ヶ岳山荘があり、山頂まで数百mという距離にも関わらず夏季には大行列ができる。槍の穂先へは鎖とはしごの連続でヘルメットが必須。渋滞によって待っている間も、ほかの登山者の落石に注意したい。

山頂直下の渋滞。待ちくたびれて緊張感が薄れないようにしたい

 槍のてっぺんには3m×5mほどのスペースに祠があるのみ。山頂からは表銀座や裏銀座、穂高岳はもちろんのこと、八ヶ岳や富士山までもが遠くに見渡せる360度の大パノラマが広がる。

山頂は10人も居られないほどのスペースに小さな祠があるだけ

●ルートガイド

 最短ルートの新穂高温泉からの道のりは長く緩やかな坂を歩き続ける。3時間ほど歩いたところで滝谷出合という大きな石が転がる沢に出る。ここは過去の豪雨で橋が流され、現在は小さな木の橋を渡るか、渡河するしかない。

 約1時間歩くと槍平小屋に到着。ここではテント場もあり宿泊も可能だ。

 さらに2時間半歩くとカール状の地形が現れてくる。ここが千丈分岐だ。木々が低くなり、ようやく槍の姿もはっきりと見えてくる。カール地形の中は砂礫や小さな岩が転がっているので、歩くのは要注意。下りの時は滑りやすいので特に気を付けたい。

槍ヶ岳がようやく姿を現す千丈分岐

 ここを登り切れば南岳と槍ヶ岳への分岐となる飛騨乗越に到着だ。槍ヶ岳が目の前に迫り圧巻の景色が広がる。

 約15分歩けば槍ヶ岳山荘に到着。槍の穂先へトライする際は、重たい荷物を置いて、水とファーストエイドなど最低限の荷物だけ持って行くことをおすすめする。

●表銀座縦走路

 直接槍の穂先を目指すルート以外にも燕岳から大天井岳、西岳を経て登りつめる「表銀座」や鷲羽岳や双六岳を経てたどり着く「裏銀座」などルートに名前がついた縦走路もある。

 体力と時間が許せばこの「表銀座」縦走路を歩くのもオススメだ。燕岳の稜線に登って以降、終始槍の姿を見ながら歩ける登山として、ハイカーから人気が高い。その人気ぶりは東京の銀座さながらという理由で「表銀座」と名付けられているのだ。