日本アルプスの北部に位置する飛騨山脈は標高3000m級の日本を代表する山々が連なる。一般的には「北アルプス」という呼び名で親しまれ、世の登山者憧れの山脈だ。ここには日本の標高第三位の奥穂高岳(標高3,190m)や槍のように尖ったピークが象徴的な槍ヶ岳(標高3,180m)をはじめとした、日本屈指の高山が多い。それぞれのピーク同士は繋がっていて、どこまでも続く荒涼とした稜線はハイカーの心くすぐる光景だ。
主だった山の頂上は森林限界を超えているので山上からは大パノラマが望め、これぞトレッキングという眺望。景色だけでなく、色とりどりの高山植物が咲き誇るお花畑や夏でも溶けない雪渓など北アルプス特有の山歩きも出来る。そんな魅力溢れるエリアにおいて、今こそ登りたい! と熱く推薦する山を編集部が厳選して6座をピックアップ。1座ずつ全6回の連載としてお届けする。第1回目は初心者でもチャレンジしやすい「白馬岳」。自分のレベルに合わせてこの夏、チャレンジしてほしい。
■[長野県]白馬岳(しろうまだけ) 標高:2,932m 行程:1泊2日
歩行時間:9時間50分
技術レベル:★★☆☆☆
体力レベル:★★★☆☆
【オススメポイント】
1.初級者もトライしやすいルート
2.山頂からの大パノラマは圧巻
3.夏の雪渓が歩ける
●北アルプス大人気の山
北アルプス最北端に位置する白馬岳。麓の村名は「はくば」だが、山は「しろうまだけ」と読む。
この呼び名は、雪解け時の残雪と黒く形作られた岩肌とが組み合わさり山肌が馬のように見えたことから。その姿が現れると村人たちが「田植えの時期が来た」と知る合図だった、というのが由来。漢字にすると「代馬(しろうま)」で、田植え前の代掻きに使われた馬を意味する。後に代馬が転じて白馬となり、村やスキー場名は「はくば」になったが、山の名称は今も「しろうまだけ」だ。
白馬岳は、栂池や八方尾根のようなゴンドラでのアクセスはできないが、山小屋に泊まり1泊2日で登る行程が一般的なので、体力的には問題はない。標高は2,932m。取り付きとなる猿倉からは標高差1,700mの比較的穏やかな傾斜を上がっていく形だ。
●日本を代表する大雪渓
白馬岳の大きな魅力は白馬大雪渓を歩けること。ここは、日本三大雪渓の一つで、長さは約2kmにも及び、雪渓は夏でもすべてが消えることはない。雪渓歩きは、清涼感いっぱいで晴れた日はとても気持ちが良いが、夏でも半袖ではいられないほどに体感温度は下がる。また、天候不順による濃霧での道迷い、クレパスへの落下、スリップなど危険な箇所も多い。なので、軽アイゼンは必携。白馬駅前の観光案内所やベースの猿倉荘でもレンタルが可能だが、夏の最盛期などは利用者が多いので自身での準備が安心。また、大雪渓上部は落石もある。雪渓を落ちる石は音がせず、ガスがかかった際は特に危険。ヘルメット着用も推奨される。
●ルートガイド
スタート、ゴール地点共に猿倉となる。猿倉から白馬尻小屋までは樹林帯を進む。小屋から先が大雪渓で、標高差600mほどを2~3時間かけて歩く。好天時は気にならないが、濃霧時はいつの間にかルートが外れてしまうことも。先行者の踏み跡やルート目印を意識しながら歩くことが必要。葱平( ねぶかっぴら)から先も雪渓が続き、稜線上まで出ると二つの小屋が現れる。白馬岳頂上宿舎に続き、頂上直下には山小屋と呼ぶには規模が大きすぎる白馬山荘が建つ。
山荘から頂上までは約15分。頂上からは北アルプスはもちろん、好天時には南アルプス、八ヶ岳、遠く富士山までも見渡せる。
●絶景ポイント:白馬の大雪渓
猿倉から白馬岳へのルートの醍醐味はなんといっても白馬大雪渓。沢に積もった雪が一年中残り、夏の登山シーズンでも多くの登山客で賑わう。他に類を見ない大規模な雪渓を歩けるとあり、白馬岳登山の見どころの一つだ。取り付きから上を見上げると、広い雪原の上を一列になって人々が歩いていく姿は壮観。日本でありながら、どこか海外の山を思わせるような雰囲気さえある。