■ルートタイム以上に厳しい行程

まるでヨーロッパアルプスのような眺め。行ったことないですが

 駐車場から中岳までは、ルートタイムで2時間少々の道のり。休憩を含めると、往復で4〜5時間は計算しておきましょう。

 火口が見下ろせる中岳の稜線に乗るには、なかなか手強い急登が待ち受けています。しかも火山なので、道中には植物がほとんどありません。日射しが強いこの時期に逃げ込める木陰や水場がまったくなく、ひたすら炎天下を歩き続けることになるため、ルートタイムや標高差以上にハードな道のりが続きます。慎重な天候判断も必要でしょう。

稜線までは岩場の急登。道はしっかりしていて歩きやすい

 しっかり登り応えがほしい方は、北側に位置する仙酔峡の駐車場から入山し、仙酔尾根から山頂を目指す「仙酔尾根ルート」や「すずめ岩迂回ルート」もあります。単調な登りが続く仙酔尾根は、地元では通称「バカ尾根」とも呼ばれる急登で、なかなかにしんどい体力派向け。梅雨入り前のミヤマキリシマが美しい時期が狙い目です。

 どのルートから登るにせよ、夏の間は涼しい時間帯を選ぶか、少しでも暑さが緩んだ日を狙うことをおすすめします。

気候的にはミヤマキリシマが咲く時期がベストでは

■とはいえ、阿蘇山にしかない景色は魅力的

ここは一体どこなんだ? 「砂千里」と呼ばれる荒涼とした風景

 一般的な山よりも、登山時の注意点は多い山ですが、火山ならではの独特な景色はとても魅力的です。富士山や浅間山、御嶽山など、本州にも登山可能な火山はいくつもありますが、阿蘇山には、そのどれとも異なる荒涼とした、どこか地球外の惑星のような風景が広がっています。

火山独特な風景。今にも崩れそう
麓のカルデラ内に向かって溶岩が流れ出た跡がよくわかる

 ちなみに、中岳から見下ろせる火口は計7つ。神秘的な火口湖「湯だまり」が見える火口は活動中の証拠で、火山の活動状況によって湯の色は変化します(現在は灰色)。湯温は50〜60℃ほどあり、一瞬で金属を溶かしてしまうほど非常に強力な酸性なのだそうです。

 登山ルートは、雨などの影響によって崩落や亀裂で足場が悪くなっている場所もあり、火山ガスにも十分注意して決められたルートを守っての登山、及び下山を心がけましょう。

 また、出かける前に「阿蘇火山火口規制情報」から、詳しい登山ルートや火口周辺の規制に関する最新情報の確認をお忘れなく。

【画像20枚】本州の火山とはまったく違う「阿蘇山」ならではの不思議な景色
登山用の弁当を買うなら、ローカルチェーン「ヒライ」へ。ちくわにポテサラを詰めてあげたおかずが人気