夏休みほど暑くなく、混雑もしていない梅雨時の旅行は、なんとも乙なものです。しかし、運良く晴れを引ければ良いのですが、日頃の行い次第では旅行中ずっと雨に降られる、なんてことにもなりかねません。
しかし、「雨では山にも登れないし、楽しみにしていた景色も見られない」なんて悲観することはありません。雨の日は雨の日にしか見られない景色があるのです。特に濡れそぼった森や神社は、雨の日にしか見られない美しさがあります。
その代表例として、熊本県の阿蘇山の麓にある「上色見熊野座神社(かみしきみくまのいますじんじゃ)」を紹介してみましょう。
■「異世界への入口」と言われるのも納得
阿蘇山は、外輪山が周囲約128kmもある世界最大級の火山です。その広大なカルデラの中でも、「奥座敷」として知られる高森町に今回の目的地、上色見熊野座神社はひっそりと佇んでいます。
参道に入ると、300段弱の石段が杉の森の奥へと延びています。両側には100基ほどの石灯篭(いしどうろう)が並び、ピンと張り詰めた静かな空気が流れていることに気がつくでしょう。
晴れた日に木漏れ日が射し込む景色も素晴らしいのですが、雨の日の荘厳な雰囲気がとても似合う美しい参道です。
この苔むした石段が印象的な道は、アニメ映画にもなった漫画『蛍火の杜へ』の舞台であり、映画『るろうに剣心』の撮影地になったことでも知られています。『蛍火の杜へ』の作中では、とても印象的なシーンに登場するのですが、ここが選ばれたのにも納得の雰囲気です。