■晴れていれば色々な昆虫が動き始める

 少しマニアックな視点だが、尾根道が多いこのコースで注目したいのは、普段都会ではなかなかお目にかかれない山奥の昆虫たちだ。

 たとえばヒゲボソゾウムシの仲間。メタリックグリーンの毛に覆われたゾウムシでとても美しい。あるいはオトシブミ。落葉樹の葉に切れ込みを入れ、そこに卵を産んだら葉巻のように丸めて地面に落とすという面白い子孫の残し方をしている。さらには東京ですでに絶滅の指定を受けている蝶、コツバメ。低地なら春に出現する蝶だが、雪深い場所ではかなり遅くまで見られる。幼虫は越後駒ケ岳に生えているアセビやシャクナゲなどの花やつぼみを食べて育つ。そして見つけるとなぜかテンションが上がってしまうギフチョウ。カタクリなどが群生していれば、吸蜜する姿を見ることができるかもしれない。

右上から時計回りに、ヒゲボソゾウムシの仲間、オトシブミ、コツバメ、ギフチョウ

■残雪で生じた水溜りで命を繋ぐ生きものたち

 さらに進むと、残雪が溶けて一時的に水溜りになっている場所がある。こうした場所はカエルやサンショウウオなど、産卵時期に水辺が必要な生きものにとっては非常に大事な環境だ。

 よく見ると、水中には小さなバナナのような白い塊がいくつも見られる。クロサンショウウオの卵塊だ。透明なゼリーの中に小さな黒い卵がたくさんあれば、ヤマアカガエルの卵塊。そして、水溜りの周りの植物に、ナツミカン大の泡の塊があれば、それはモリアオガエルの卵塊だ。標高1500m付近の水溜りでこのような生きものが見られるのだから驚きだ。

残雪にできた水溜り。左下にクロサンショウウオの卵塊が見える

 水溜りを過ぎると所々で雪の上を歩くことが多くなる。天気によっては固く締まって歩きにくいこ

ともあるので、転倒防止のためにもアイゼンは必ず持っていこう。

 ということで、今回は歴史ある銀の道を通って、越後駒ケ岳を目指すルートを紹介した。今年のように雪が多い年は、7月といえども残雪があり、頂上に近づくほど季節は春に逆戻りしてゆく。ぜひ、足元の小さな生きものたちの息吹を感じながら山を歩いて欲しい。