しかし、ここから先の道は、歩きやすいとはいえ山道である。観光客の姿はなく、ハイカーが中心だ。
尾根道のすぐ下には家屋や学校があり、目線を上げると海が広がっていたり、ここに連なる低山の山容が見事だったりと、とにかく目に入る景色の楽しさたるや。鉄拐山から眺める広大な海の風景と、栂尾山から高倉台団地越しに見る鉄拐山の山容は、個人的に大のお気に入り。
優しめのコースだからといって油断していると、栂尾山の手前で400段もの階段に出くわすので心しておこう。不思議なもので、山道以上に階段はやたらと疲れるものだ。
まるで天まで続くかのような階段をようやくのこと乗り越えると、栂尾山の山頂にたどり着く。木製の展望台は、このあたりで唯一の屋根でもある。これからの時期は、陽射しや雨をよけるためにも覚えておきたい。狭いけれど。
栂尾山から先は、ついに瀬戸内海の美しさから離れる。いよいよ須磨アルプスのハイライト「馬の背」に挑むのだ。起伏に富んだ圧巻の岩稜に、たくさんのハイカーが張り付いているのが、この場所の風物詩。手がかり足がかりはしっかりと付いているから、歩くことはそう困難ではない。もちろん高度感はあるけれど。
ちなみに、かつて源義経が坂落としで平家を奇襲したと伝わるのが、鉢伏山や鉄拐山のあたりらしい。馬の背を歩いて見ると、ここもその候補に数えてもいいのではないかと、ぼくは思ったりする。さらに先にそびえる高取山を越えると、そこが鵯越(ひよどりごえ)。一般的には、こちらの方が坂落としとして知られているかもしれない。
諸説ある歴史物語を、自分の目で見て足で歩きながら検証したり想像したりするのは、じつはとても楽しい。低山は、そんな楽しみ方にもぴったりなのだ。
<低山トラベラー厳選。須磨アルプス周辺の立ち寄るべきスポット>
・【茶屋】旗振茶屋は眺めが最高。飲みたいけれど先があるので……ビールはぐっと我慢
・【茶屋】おらが茶屋は休憩にぴったり。広場のベンチは絶景スポットでもある
・【ラーメン】つい食べてしまうご当地「第一旭」のBラーメン
・【ビール】いつか行きたい森下酒店&スタンディングBar
・【コース計画】須磨浦公園駅と妙法寺駅も、スタート&ゴールに最適