■シー・トゥ・サミット(海から頂上へ) スタート!
弥山へと続く主要な登山コースは3つあり、今回はその中の「大元コース」を歩くことを選択。このコースの特徴は、3つのコースの中で最も長いぶん、やや勾配が緩いことと、歩く人が最も少ないこと。
大元コースの登山口は港から最も奥まった場所にあり、厳島神社の裏手を抜けて水族館の前を通り過ぎる頃には道を行き交う観光客の人影もめっきり減りました。
登山道入口は大元神社前。山頂までトイレはないので、入山前に済ませておきましょう。
鹿があちこちたむろする大元公園の中をゆるゆると歩き始めます。木漏れ日の中をなだらかに上がっていくのは、例えようもなく気持ちいいひとときです。
歩きやすく整備された道は、モミやツガなどの原生林の中を緩やかに登っていきます。登山道には石段も多いのですが、段差も高すぎず、思ったほど苦にはなりません。ただ、照葉樹の落ち葉が意外に多く、石段の下りなどでは滑らないように注意しながら歩く必要あり。
■原始の森と巨石が導く、信仰の山道
宮島は日本を代表する観光地のひとつですが、大元コースを歩く人は思いのほか少なく、静かな山歩きが楽しめます。
歩を進めるうちにある程度勾配は増してきますが、危険な箇所もなく、時折小さな子どももがんばって歩いています。
森の中には、宮島を形成する花崗岩の巨石があちこちに点在していて、なかには弘法大師が修行していたという「岩屋大師」などの見どころも。
登山口から歩き始めて1時間半弱で、「駒ヶ林」の分岐に到着。5分ほど登れば抜群の眺望が待っているというので、横道に逸れて上がります。
急坂の先に待っていたのは、なだらかに広がる巨岩と、その先に広がる森と海! がんばって歩いたご褒美のような景色のなかで、足を投げ出して座ってひと休み。ここは古戦場だったそうですが、いまは平和な時間を過ごす場所でした。
■山頂で待っていたのは海だった
岩の上でのしばしの休息の後、再び登山道に。ここから約30分、鞍部をのんびり歩いたり、仁王門をくぐって階段を登ったりすれば、目指す弥山の山頂に到着です。
弥山の山頂も、大小さまざまな花崗岩が鎮座し、ところどころに小さな祠が祀ってあったりして、独特の景観を見せています。
何よりも素晴らしいのは、山頂からぐるりと見渡せる、瀬戸内の景色! 穏やかに青く輝く瀬戸内海と点在する島々。海を挟んで広がる廿日市の町並みとその奥に白く霞む緑深い山の連なり。宮島の山と森も足下から広がり、静かに平らかな海と周辺の島や陸地が近いという瀬戸内の島の山旅の魅力を存分に味わうことができます。
山頂には休憩所を兼ねた立派な展望台があるので、そこで昼食。レトロなイラストの包み紙(なんと12種類もあるとか)を解いて蓋を開けると、タレ色に輝く焼き穴子がぎっしりとご飯を覆ったあなごめしのお姿が! その見事な佇まいに感動しながら箸を進めます。眼下にひろがる瀬戸内の海景色がその美味しさをさらに増してくれるようです。
■青もみじに癒されながら下山
実は弥山には登山コースの他にロープウェイもあり、登山者に限らず山頂には続々と人がやってきます。景色と昼食(デザートはもちろんもみじ饅頭!)を十分に味わったら休憩所の席を空け、下山開始。ロープウェイ下山も考えましたが、今回は一番短い「紅葉谷コース」で歩いて下りることにします。
一番の人気コースだけあって、途切れることないくらいどんどん人が登ってきます。普段着姿で歩く人も多いです(靴は歩きやすく滑りにくいものを選びましょう)。
原始林の中を歩いて下りていくと、その名の通り紅葉が増えてきます。見上げると青もみじの葉を透かして明るい緑の陽光が降り注ぐ空がなんとも気持ち良いルートです。秋の紅葉シーズンはさぞかし見事な景色になるのでしょう(相当混雑するでしょうけど)。
順調に下山し、厳島神社近くの登山口まで1時間ちょっとで到着すると、下界は朝と比べものにならないくらいの人出。そのまま厳島神社を落ち着いて参拝するのが定番のおすすめ…… なんですが、今回は敢えて別な楽しみ方をおすすめします。
潮が引いて露わになった海底を横に見ながら、フェリー乗り場まで戻ります。
ただし、港から乗るのは宮島口までのフェリーではなく、なんと広島平和公園行きの船!