群馬には1年のうちのたった2週間しか滑れないプレミアムな山があります。尾瀬にある至仏山です。期間は例年、4月後半からゴールデンウィークまで。2022年は4月23日から5月6日のみ開かれました。登山者もバックカントリーを目的としたスキーヤーやスノーボーダーも限られた時間を楽しんだのでした。

■残雪期の登山と滑走を限定する理由

尾瀬では雪の下に隠れたハイマツなどの高山植物の保護が行われている

 至仏山は尾瀬国立公園内に位置し、群馬県自然環境保全地域に指定される日本百名山のひとつです。過去に登山道周辺での植生荒廃が進行し、極めて深刻な問題となり、登山道の閉鎖や再整備が現在も行われています。現在も植生回復のための保全対策の真っ只中。高山植物の保護を目的に残雪期の登山やバックカントリーが可能なのは春の2週間のみとし、2022年は5月7日から6月30日まで全ての登山道は閉鎖されます。

 ゴールデンウィーク前後の残雪期の対策として、4月の中旬に至仏山保全対策会議の委員が実際に登山して現地調査を行い、残雪状況を把握したうえで登山者に向けて啓蒙活動を行います。毎年、ホームページには重点植生保護区域と危険区域を設定し、注意喚起しているのです。利用者の安全の観点も盛り込まれており、登山計画の前には必ず目を通しておきたいですね。

2022年の「尾瀬保護財団」が発表した至仏山入山の方に向けたチラシ(出典:尾瀬保護財団)

■残雪期の至仏山の魅力

この時期だけの山頂からの眺めは人を虜にする

 高山植物を守るために、夏は尾瀬ヶ原から山頂に至る東面の登山道は登り専用になっています。しかし、残雪期には至仏山山頂から山ノ鼻まで下ることができます。

 先日、山頂で出会った登山の女性たちは「今しかこの下りのルートを歩くことしか出来ません。それを楽しみに来ました」とかなり遠方から訪れたよう。山ノ鼻にある山小屋に宿泊して、雪のある尾瀬を満喫するとのことでした。

 1年のうちに2週間しか滑ることができないため、毎年楽しみに登る方も少なくありません。私自身も3度目の至仏山での山スノーボード。尾瀬の山に登るということや山頂からの眺めの素晴らしさに魅了されました。

広大な斜面と無限の滑走ラインにワクワクする

 滑る斜面は広大で、タイミングによってはパウダースノー(ざらめ雪)に当たることもあるのだとか。私自身は春らしいコーンスノーしか滑ったことがないのでうらやましいかぎりです。パウダースノーでなかったとしても、滑り終わった後の自分自身のラインを振り返るとにっこりと口角が自然に上がります。この気持ちが「また来年も」と刻まれるのでしょう。

■雪解けによっては期間が早まることも

道迷いの防止のため何年も繰り返しリボンが結ばれている

 雪の量は毎年変わります。今年のように積雪が多くても融雪が早く進む年もあります。高山植物の保護が優先ですので、雪の量が減って保護できないと判断されれば、山に入れる期間は早めに終了することもあります。最新の情報は「尾瀬保護財団」のホームページにてチェックしましょう。

尾瀬保護財団:https://www.oze-fnd.or.jp

 今回の私たちの滑走は至仏山山頂からワル沢へ滑りました。昨年はなかったスノーブリッジ(川の上にアーチ状に残った残雪の橋)も、今年は川上川上流にあり、難なく渡ることができました。「自分が踏み抜いてしまわないか」といつもドキドキしてしまいます。でも、万が一に備える気持ちは大切です。山に入るときは謙虚に、自然に感謝を表し、無理をしないことを心に留めて引き続き楽しんでいきたいですね。

自然と対話するように歩いていく