■登山中に熊と遭遇

 最近はアニメ化もされた人気マンガ『ゴールデンカムイ』の影響もあり、ヒグマの危険性が今まで以上に認知され始めている。本州に生息するツキノワグマも死亡事故が報告されることがある危険な野生動物である。今回は筆者が下山中にツキノワグマに遭遇した体験談を紹介する。

鳳凰三山から眺めるアルプスの山々(写真:みう)

 筆者は7月半ばに友人、夫と南アルプスにそびえる鳳凰三山をテント泊縦走していた。友人、夫は熊鈴を持参していたものの、筆者自身は忘れてしまったため、彼らと行動を共にし、かつ定期的にトレッキングポール同士をぶつけて音を出したり、話しながら歩くことで人の存在をアピールしながら歩いていた。

 登山最終日、鳳凰三山のひとつである薬師岳から4時間ほどかけて下山していた筆者は、登山口のひとつ「青木鉱泉小屋」のトイレを利用するため、残り30分ほどの行程の段階で仲間に声をかけ、一人先に早歩きで進んでいた。このとき、下山も終盤で完全に油断しており、音を立てずに歩いてしまっていた。

青木鉱泉小屋へ向かう登山道。両脇には木が鬱蒼と茂っている(写真:みう)

 途中、ガサガサと音がしたため登山道の脇にある林に目をやると、黒い動物が動いていた。よく見ればツキノワグマの子熊。驚いて思わず硬直してしまった。子熊がいるということは母熊も近くにおり、何かあれば子を守るためにこちらが襲われる可能性があるからだ。とっさに声が出そうになったが、刺激するのは危険と判断し、こちらをじっと見ている子熊から目を逸らさず、ゆっくり後退した。しばらく後退すると、興味を失ったのか林の奥に行ってしまったが、近くにまだ母熊が近くにいる可能性もあるため、トレッキングポールを鳴らし、声を出しながら小屋へ向かった。

 後から下山してきた友人や夫は、この子熊の母熊らしきツキノワグマを目撃したとのこと。彼らも熊を刺激しないようゆっくり後退し、難を逃れたそうだ。

 登山ではよく、登山口に「熊注意」や「熊目撃情報」の看板が立っているので、気をつけていたものの、このときは油断が重なった際にツキノワグマに遭遇してしまった。運よく事故には合わなかったものの、このときの反省を活かして熊と遭遇しない対策、熊と遭遇してしまった際の対策を再確認したので、ここで共有したい。