■熊と遭遇してしまった際の注意点

 不幸にも熊に出合ってしまった場合、焦らず以下の行動をとること。

・大きな声を出す、いきなり物を投げるなど、刺激を与えてしまうと熊を興奮させてしまい追いかけられるので絶対に避けること。死んだふりも危険なのでやめよう。

・熊は背中を見せて逃げる生き物を追いかける習性があるので、焦って逃げないこと。木に登って逃げるのも、熊は木登りが得意なので危険。

・熊から目を逸らさず、ゆっくり後退すること。ただし、このときに転んでしまうと危険なので、足元には特に注意すること。また、直接目を合わせると警戒させてしまうので、目線は熊におきつつも、目を合わせないようにすること。

・ゆっくり後退しながら、帽子や鞄などをゆっくり地面に置いて、熊の興味を自分から逸らす。このとき、急に走り出したり、物を投げたりするとかえって刺激してしまうので注意すること。

・熊との距離が近くなってしまった場合は風向きに注意し、熊が風下になるような位置関係で熊スプレーを噴射する。熊スプレーはザックのサイドポケットなど、取り出しやすい場所に入れておく。

・熊が目の前で立ち上がった場合でも、威嚇行動なのですぐに襲うわけではないことを冷静に判断し、ゆっくり後退して離れること。もしくは、熊スプレーを使うこと。

・子熊の近くには必ず親がいるので、近づかないこと。

 熊による事故で死亡に至るのは、子熊と母熊の間に人間が入ってしまうケースが多く、母熊の防衛本能が強くなって攻撃してくる。登山道から外れない、子熊には近づかないことは徹底しよう。

 筆者は熊と遭遇して以降、熊鈴を必ず携帯するのはもちろん、ザックのサイドポケットにいざというときに地面に置いて熊の注意をひくためのタオルやサングラスなどを入れるようにしている。登山前は必ず自治体や山小屋の熊情報を確認し、危険を感じたら予定を延期する、撤退するなどの判断をしながら安全に登山を楽しもう。

■自然を感じ、登山を楽しもう

野生動物と適度な距離を保ち、山の自然を満喫しながら登山を楽しもう(写真:みう)

 登山は楽しい反面、危険が伴うアクティビティである。人間も野生動物も、山の自然を享受しているので、お互い干渉しないように楽しむのが大切だ。

 今回はツキノワグマに焦点を置いて紹介したが、ほかにも登山には危険がある。事前に登る予定の山の情報や、天気予報を徹底的に収集して備えよう。