■なんだか、思っていたのと違うんですけど……
すでにここまでの特徴で、私はクスクスに絶大な信頼を寄せていた。これはもう決まりだ、と確信していた。小屋の宿泊は事前に予約制なので、人数分の準備ができるけれど、ランチは予約制ではないから、毎日何人注文してくれるかわからない。クスクスならば、注文が入ってから1人分を用意できるから、用意していたのに食材が余るなんていうロスもなく、温かい料理を提供できる。仮に余ってしまっても傷まない。最高じゃないか。
隣町の輸入食品のお店でクスクスを購入し、わくわくしながら実際に作ってみた。
まず、茹でたクスクスを試食してみる。
「え、なんだか思ってたんと違う……」
次に、クスクスにオリーブオイルと塩を入れて混ぜ、そこに熱湯を入れて蒸すようにしばらく待ってみる。バターバージョンもやってみた。食べ比べてみると、どうやらオリーブオイル+塩の方が美味しいみたい。バターはクスクスの匂いを強調するようでイマイチ合わず、パサパサしている。
どちらの作り方もまずくないけれど、特別美味しくもない。小麦のニオイなのか、独特の香りもする。クスクス、こんなにクセが強いとは……。
■クスクスの「ク」は苦労のク、「ス」はすったもんだのス
燃料に余裕はないから、加熱に時間のかかるものは難しいし、山の上にある小屋だから、油は拭いてから洗うにしてもあまり使いたくない。その点、クスクスは優秀だと思うのだが。
どうしたら美味しくクスクスが食べられるのだろう。
クスクスはパスタだから、茹で汁に塩を入れてみたり、混ぜた時にオリーブオイルを加えてみたり。お湯の量を2倍にもしてみた。目には目を、クセにはクセ強めなものをってことで、鰯オイルやターメリックを入れてみたり。アゴや昆布、カツオなどの出汁系で戻してみたり。
しかし、どれもあの独特なニオイと小麦感を消すには至らず。正直、ターメリックには期待していたのだけれど、クスクス特有のニオイはターメリックを入れても変わらず。おまけにターメリック臭が追加されただけだった。色はきれいだったけれど。
それから、クスクスは軽くてふわふわなこともネックだ。軽めな食感なので、あまり噛まずに食べられてしまい、満腹感を感じづらい。かと言って、量を増やしても食感の違いに乏しく食べ飽きてしまうし、合わせるスープやソースが先になくなってクスクスばかりが残ってしまいそう。うむむ。
クスクスだけでもなんとか美味しく食べられる調理法と、全体の色味や香りも楽しめる組み合わせはないものだろうか。せっかく、山小屋に理想的な食材を見つけたと思ったのに、こんなことになろうとは。
苦難の日々は、まだまだ続く。結局なにがランチに採用されたかは、今シーズンの光岳でご賞味ください!