■風景画的な山頂から、開放的な尾根道へ

東には埼玉の見晴らし眺望が。ちょっと引いた位置から桜も一緒にフレーミング

 週末ともなれば、広い山頂は休憩をするハイカーで賑わう。屋根のある東屋がひとつとベンチがいくつかあるけれど、座れるとは限らない。レジャーシートや折り畳み椅子などを背負っていくといいだろう。ただし、トイレがないことを頭に入れておきたい(駐車場周辺のキレイなトイレが最終)。

御嶽駅に向かうコースは明るく爽快な尾根道が続く

 ここから東京の御嶽駅まで下山するコースは、ぼくのお気に入りコースのひとつ。埼玉と東京の県境となる尾根道は「関東ふれあいの道」のセクションとも重なり、春から新緑のシーズンに向けて抜群の気持ちよさ。ゴルジュに挟まれながら歩いた前半からガラリと変わり、後半は開放的な尾根道歩きになる。太陽と風とともにある、このコースの真骨頂である。

尾根道から望む奥多摩の稜線。写真中央やや右に御前山、左に大岳山

 ときおり目に入る遠くの稜線は、奥多摩方面の山々だ。そのなかにオオカミ信仰が伝わる大岳山やカタクリで知られた御前山を見つけることができる。それぞれ「奥多摩三山」を構成する東京の名山で、いずれも山頂から素晴らしい富士山を眺めることができるとして山好きに知られている。ちなみに、もう一座は三頭山である。

高水三山の一座、岩茸石山。歩いてきた方角をふり返ると棒ノ嶺を眺めることができる

 名栗湖から棒ノ嶺の山頂まで2時間強、距離にしておよそ5km弱(休憩時間も含めると、往復で5時間ほどみておきたい)。ここから御嶽駅まで歩く場合は、さらに9kmの道のりを加えなければならない。総合計14kmほど歩くことになるため、余裕をもって8時間の山行計画を立てよう。

 そういえば、棒ノ嶺の別称を「棒ノ折山」と呼ぶことを書き加えておく。かつて武蔵国を拠点にしていた畠山重忠という武将が、この山を越えるときに使っていた石の棒を折ってしまった、という逸話が由来のひとつ。それだけ急な道があるのかと想像するけれど、それは間違いではない。体力に不安があるときは、棒ノ嶺から麓の日帰り温泉「さわらびの湯」に下りるルートをとる(白谷沢より少し傾斜が緩い)のがベターだ。