2022年3月2日、北京オリンピック後、初の公式戦であるスキージャンプ女子ワールドカップ個人第14戦(ノルウェー・リレハンメル)で、高梨沙羅が優勝し、通算勝利数を62に更新した。先に行われたオリンピックの混合団体戦の失意からの大復活。本記事では、今後スキージャンプを観戦するうえで、処分の対象となったスーツ規定など、端的にわかりやすく取り上げていきたい。

 

 北京2022オリンピックのスキージャンプ混合団体において、日本代表の高梨沙羅選手を含む女子選手5人がスーツ規定違反で失格となり、その計測方法とルールの厳しさが話題となった。

 今までさまざまなルール変更が行われてきたが、現在のルールはどのようなものなのか。ウェア、スキー板、ジャンプ台の助走路の3つについて、過去の一時期と現在を比較し紹介する。

■競技用ウェア「ジャンプスーツ」のサイズ

ボディサイズに対して、ほとんど遊びがないフィットした状態が求められている

 1998年に開催された長野オリンピックではスキージャンプ日本代表が個人ラージヒル、団体ともに金メダルを獲得したことは強く記憶に残っている。その当時、ボディサイズよりゆとりのあるジャンプスーツが採用されていたが、翌シーズンからスーツの「あそび部分」に規制が行われた。また、空気透過率がほとんどないスーツも登場し、その点についても規制が行われた。

 なぜこのような規制が行われたのか。それはスキージャンプに重要な空気抵抗(抗力)や揚力、そして気流の流れが記録に大きく影響を与えるからだ。現在の規定では、ボディサイズに対するスーツ寸法の最大許容差は、体のあらゆる部分(直立姿勢)において 最低1cm、最大3cm(男子)とされ、競技時には体にフィットしている状態が求められている。そして、素材の空気透過率についても一定の基準が定められている。

 しかし、ジャンプ選手はシーズンを通して体が細くなっていく傾向がある。代表選手においては長期間の海外遠征を行うため、トレーニングの回数が減る上に、食生活の変化も重なり筋量のキープが難しくなるため。11月の開幕から3月の閉幕まで、サポートスタッフはスーツのサイズを詰める作業が続くと言われ、厳しい状況の中で戦っているのが実情だ。