4年に1度の冬季五輪が開催される冬がやってきた。双葉社より発売中のスキー専門誌「BRAVOSKI」から北京オリンピック直前情報の中から、フリースタイルスキーに限定した観戦ガイドを連載でお届け。今回で最後となる第7回目は、「ハーフパイプ」について。降雪や風に影響されやすい種目であり、始まってみるまで何が起きるかわからない予測不能な競技でもある。
■難度か、独創性か
欧州の若手が活躍するスロープスタイル、ビッグエアとは異なり、ハーフパイプのとくに男子は北米を中心とした経験豊富なライダーがメダル争いを演じることになりそうだ。
男子の見所は平昌五輪で16歳にして銅メダルを獲得したニコ・ポーティアス(NZL)のさらなる進化だ。’21季に両方向のダブルコーク1620を完成させXゲームスのスーパーパイプで優勝。今やシーンを牽引する存在になった。それを追随すべく前回で銀メダルだったアレックス・フェレイラ(USA)や、アーロン・ブランク(USA)が同トリックを習得。今回はこれら1620、1440などの高回転トリックを安定して、スイッチや逆回転でかけられるかが焦点になる。
しかし、ただ高回転を回せば勝てるわけではない。「独創性」や「前進性」という特殊な観点から採点されるのがこの種目の妙だ。また、少数派だが、“低回転だからこそ得点が出るトリック”をする選手もいる。バーク・アイバーン(USA)は通常のトリックよりも半回転少なくして、より独創性を高めたダブルフラット900をマスターしている。
難度を追求するか、独創性に活路を見出すか、どちらが正解だとは言えないのだ。
■三冠を狙う三刀流のニューヒロインにも注目
女子の注目は、まず平昌五輪で優勝後、表彰台の一番高いところに立ち続けたキャシー・シャープ(CAN)だ。1080などの高回転トリックをミスなくメイクするので、そのポジションは盤石だった。
しかし、その絶対女王のポジションを脅かす強大なライバルが現れる。ビッグエア、スロープスタイルでも触れたアイリーン・グー(CHN)だ。
改めてそのプロフィールを確認すると、彼女はアメリカ人の父、中国人の母を持つ18歳。その凄さは、いわば“三刀流”にある。’21季のXゲームスでは、初出場にして、スロープスタイルと、キャシー・シャープを下してスーパーパイプで優勝。さらにビッグエアで3位という史上初の快挙を成し遂げた。この大会のあとに女子初となるキッカーでダブルコーク1440を習得したため、ビッグエアでも優勝の可能性が高まったが、ハーフパイプでも彼女の技量が他選手よりも頭一つ抜きんでていると言っても過言ではない。
武器となるのは両方向の1080に加え、コーク900やフラット540などトリックの引き出しが幅広くあることだ。ジャンプの大きさがあり、グラブの完成度も高い。ルーティンを完璧にメイクした場合、シャープでさえ敵わない点数をたたき出す。
グーは場合によっては三冠王となり、北京五輪全体の主役となる可能性も秘めている(※先日、北京五輪の女子ビッグエアで金メダル、スロープスタイルで銀メダルを見事獲得した)。
日本からは鈴木沙織がすでに五輪派遣基準を満たしている。勝つために求められるのは720や900をミスなく決めることと、高さのあるジャンプでジャッジにアピールすることだ。
この4年間で回転数や技のバリエーションが格段に進化したハーフパイプにおいて、北京五輪は新たな時代の序章となるだろう。
■SCHEDULE
●2月17日(木)
9:30 女子FSハーフパイプ予選
12:30 男子FSハーフパイプ予選
●2月18日(金)
9:30 女子FSハーフパイプ決勝
●2月19日(土)
9:30 男子FSハーフパイプ決勝
【BRAVOSKI 2022 vol.3 より再編集】