今年はここ数年で稀に見る大雪の日本列島。どんどん降雪量が減ってきていたここ数年のことを思うと、スキーを愛す僕にとっては今年はどこもかしこもパラダイスが広がっている。

 でも一昨年は稀にみる少雪で、オープンできないスキー場もたくさんあった。アイスクライミングは滝が凍らないとできない。冬の風物詩である氷上のワカサギ釣りも、結氷する冷え込みが必要だ。山の雪が少なかったせいで春の雪解け水も乏しく、山菜も不作だった。麓の畑や田んぼでも水利用に工夫が必要だったりした。

 やはり冬は冬らしくないと四季を楽しめないし、それに依存する経済も成り立たない。その天候の変化はどんどん激しくなり、全体的に見れば平均気温は上昇傾向。スキーをこよなく愛する筆者としては、冬に雪が消えてしまうのは死活問題。世界的にSDGsが叫ばれ、日本もその重い腰をあげて動き始めているが、なにせお役所仕事は何事も進むのが遅い。個人として何かできることはないものか。そう思っている方も多いのではないだろうか?

■POW Japanを知っていますか?

最近、雪山では目にすることが多くなってきたPOWのステッカー

 このステッカーをどこかで見かけたことはないだろうか? とくにスノーアクティビティを愛する人なら目にしたことがあるかもしれない。このステッカーの「POW」とはProtect Our Wintersの頭文字だ。直訳すると「私たちの冬を守ろう」という意味。

 2007年、気候変動が私たち滑り手にとって大切なフィールドである雪山に大きな影響を与えることに危機感を感じたプロスノーボーダーのJEREMY JONES(ジェレミー ジョーンズ)が、仲間たちとともに“Protect Our Winters(POW))”を設立。その後、POWの活動は世界13ヶ国に広まり、各国それぞれの抱える問題に対して具体的、直接的な活動を継続して続けている。2018年に日本でも“Protect Our Winters Japan”が発足し、活動をスタートした。

■アウトドアを愛し自然を愛す想いを一つに紡ぐ

白馬八方尾根スキー場にて従業員向けに気候変動講習を実施。八方のリフトの約70%が再生可能エネルギーの電気で運行されている(POW Japan)

 音を吸収する柔らかな雪、静寂の支配する斜面を一気に滑り降りて仲間とハイタッチ。そんな時間を共有することは、想いを共有することと同じだと思う。同じ価値観を持つコミュニティは、強い絆で結ばれやすいものだ。

 POWはスノーアクティビストから始まった活動ではあるが、クライマーでもサーファーでもトレイルランナーでも、アウトドアスポーツを愛する人は皆、自分たちの活動する自然のフィールドを愛しているはず。些細な、もしくは大きな環境の変化を肌で感じている。

 すでに他の国のPOWではスノー業界に留まらず、アウトドア・アクティビストたちに支持されて大きなうねりの一つとしてアウトドア業界全体に、さらには社会や政治に影響力を持ってきている。

 日本でも同様にスノー業界だけでなく、多くのアウトドアマンたちに認知され始めてきていて、現在では個人だけではなくアウトドアブランド、スキー場やそれに携わる企業、スノーに直接関係なくても賛同してくださる企業など、30社を超える企業がパートナーとなっている。