■年末年始は遭難多発! 慣れていても油断大敵
ただ、正月明け以降に天候が安定すると、一気に入山者(とくにバックカントリー目的)が増えることが予想される。目当てのふかふかの新雪滑走が大いに期待できるのであるから、当然の流れだろう。入山者が多いということは、単純に事故件数も増える。トップシーズンとシーズン初頭ならではの(積雪)状況の違いによる事故も目立っている。
実際、数年前には正月1月1日から救助に出動したこともあった。初心者の事故もあるが、熟練者でも油断はできない。
むしろ熟練者ほど山奥で事故発生するので、救助も容易ではなく時間がかかってしまう。天候が安定しないなかではヘリによる救助もできないので、雪中でビバーク(一夜を明かす)することも覚悟しておく必要がある。
■年末年始(シーズン初頭)ならではの冬山リスク
冬山の事故というと雪崩に目がいきがちだが、この時期(シーズン初頭)ならではのリスクは、以下のようなものもある。
● 夏道が埋まっている。加えて、まだ積雪量が少ないことによる地形のワナ。穴や沢が多く存在する。一見すると埋まっている場所でも雪の密度が薄く、踏み抜き脱出不能(手がかりのない雪の中では、浅い場所でも想像以上に脱出できないものだ。怪我をしているとさらに困難)。
● トップシーズンに難なく通過できる箇所でも、沢が深く思ったように行動できず、予定のルートから外れてしまい、脱出不能になってしまう。
● 薮などが完全に埋まりきっておらず、樹々もまだ寝ていないので滑走時には注意が必要だ。白い雪面に見えてもまだ雪中では障害物が立っている状態。運悪く当たってしまうと大きな怪我につながりかねない。
雪の多い山域では、夏道はすでに埋まってしまっている。ルートファインディングは登山者の判断に委ねられる。“道迷い→疲労→低温による行動不能”という事故もおこりやすい。とにかく小さなトラブルが重なり合って大きな事故につながりやすい。
山に登っていると、大・小いくつものトラブルはつきものだ。長くやっていると、事故に一切関わらない方が奇跡的だとも感じる。僕自身、いち登山者として無事故で過ごしてきたわけではない。山での事故は他人事ではなく、起こるものとして想定、準備しておくことが大切だと思う。
長引くコロナ禍の影響はありつつも、アウトドアアクティビティはむしろ(対応策を施しながら)盛り上がっている様子もある。来年はいったいどんな年になるのだろうか。いずれにせよ事故の少ないことを願うばかりである。
皆さま、どうかよいお年をお迎えください。