スキーに必要な板、ブーツ、ビンディング、ウエアなどの様々な専用ギアについて、今さら聞けない基本の「キ」を連載でお届けしていきます。第7回は「スキーヘルメット」について。素材や構造の基本を理解したら、選び方や使い方も変わってくるかも知れないですね。
■1. ヘルメットの命題はひとつ:衝撃から頭を守ること
近年、ヘルメットの着用は欧米に習い一般的になりつつあります。ツリーランやバックカントリーなど、滑走の幅も広がり以前に増して頭部を守ることを重要視する機会が増えたからでしょう。
ヘルメットは2層構造に分かれた「アウターシェル」及び「ライナー」の素材と組み合わせ方(構造)による違い、そしてシェルとインナーの間にある「多方向衝撃緩衝システム」が主な着目点となります。
ヘルメット自体の重さも、快適さだけでなく安全性を決定づけるポイントに。また、被り心地を向上させるうえで、ベンチレーションやインナーの素材にも注目したいところです。
●シェル:構造の違いに注目
頭部をカバーする部分は外側のシェルと内側のライナーとに構造が分かれます。直接ダメージを受けるシェルは内部を守るため硬い素材を用い、ライナーは衝撃を和らげるクッション性を持つ素材で作られ、シェルの結合方法は主に以下の2つになります。
ハードシェル構造
シェルとライナーを別々に製造し、接着剤で貼り付けるというもの。アウターに高強度な素材を用いた場合など、より高い安全性を確保できます。全体的にスリムに見えるという利点も持ち合わせています。
インモールド構造
シェルとライナーを同じ鋳型にいれて成形するもの。接着剤を使わないので、それぞれが剥がれづらく、品質も高くなります。アウターに用いる素材も軽いため、全体的に軽量化につながります。
●ベンチレーション:通気を促してムレを解消
ムレを解消するためのベンチレーションは必須の機能。換気力はもちろん、上部で通気口を開閉できるかどうかも重要なポイントです。また、ゴーグルが曇らないよう、ヘルメット内の湿気を上手く逃がせるかというマッチングも重要になってきます。
●インナー:吸汗性と保温性
インナーの役割は保温機能とフィット感の向上にあります。各メーカーで保温性と透湿性に優れるファブリックを用いたり、抗菌防臭機能を持たせたりなど細かい改良が施されています。取り外し可能なタイプがほとんど。
●あごひも:フィット感を向上させるために
あごひもはバックルの違いが大きくなります。サイドリリースバックルと磁石式のバックルがあり、前者は使い勝手は良いが、グローブをしているとやや扱いづらいため、近年は高品質モデルになるほど片手で扱える磁石式バックルが多い傾向にあります。
●サイズ可変システム:ワンタッチのダイヤル式が主流
多くのヘルメットは頭囲5cm程度であれば可変システムによってサイズ調整ができます。優れたフィット感を実現するために、いまでは標準装備になりました。BOAシステムなどに代表されるダイヤル式が扱いやすく、締めるのも緩めるのワンタッチなので、着脱も簡単です。
■2. Mipsとはなにか?
滑走中の転倒における脳へのダメージは、じつは衝撃の威力だけでなく斜めから加わる回転エネルギーの影響が大きくなります。それを軽減する仕組みがMIPS。シェルとインナーが別々に動くことで回転エネルギーをシェル側で受け止め、インナーは動かずに脳の振動を防ぐというものになります。