ハイキングで何気なく通り過ぎる、渓流の岩や古木に広がるコケ。近づいてよく観察すると、ふさふさと触り心地のよさそうなもの、小さな樹木のようなものなど姿はさまざま。岩清水を葉に溜めた雫に陽光が反射する瞬間はハッとするほどの美しい。

 草花が減るこれからの季節、一味違った緑を求めてルーペ片手に、コケが織りなす小さな絶景を探してみては。

■日本の森は、コケのパラダイス

一面に広がるコケで緑色に染まる渓谷

 コケを求めて訪れたのは、観光気分で手軽にハイキングを楽しめると関西の人気のスポット「赤目四十八滝渓谷」。かつて伊賀忍者が修行した地と伝えられるだけあって、秘境感がたっぷりと漂う。日本蘚苔類学会が選定する「屋久島コケの森」や「八ヶ岳白駒池周辺の原生林」など全国29か所ある「日本の貴重なコケの森」の一つ。森一面に広がるコケ植物と渓流が織りなす景観の素晴らしさが評価されて選ばれた。

 「日本は1600種を超えるコケの豊かな国です」と話すのは、NPO法人赤目四十八滝渓谷保勝会でツアーデスクをする西浩平さん。近年「苔テラリウム」が注目されるようになり、赤目渓谷で開催(3月〜11月)しているエコツアー「ガイドと歩くコケさんぽ」に参加するお客さんも増えているそうだ。100種類はあるという赤目に生育するコケの中から、西さんに人気のコケを紹介してもらった。