気がつけば2021年も終盤。毎年この時期になると、なぜか富士山を眺めたくなる。一年の締めくくりに、あるいは一年の始まりに、雪化粧をした富士山をありがたく眺めながら新しい年に思いを馳せる……。

 というわけで、年末年始にかけて歩きたい富士山の展望に優れた山を「丹沢山地」「伊豆」「富士山の周辺」の3つのエリアからピックアップ。どれも実際に歩いてみて、その眺めに感動した山々だ。

 では、さっそく丹沢山地からスタートしよう。

■とにかく展望が抜群! 表丹沢の定番コース「塔ノ岳」

塔ノ岳山頂より。どうですか、この見事な眺め!

 丹沢山地は神奈川県の北西部に位置する一大山塊だ。東西におよそ40km、南北におよそ20kmにおよぶ広大な山域に数々の山が聳え立ち、もっとも高い地点は蛭ヶ岳の1,673mである。

 この山域の東側に立ち並ぶ山々の中でも、とにかくハイカーから人気が高い山こそ「塔ノ岳」。ここから南に連なる山々は「表丹沢」と呼ばれ、神奈川県の海側に面した丹沢山地の表玄関である。

 塔ノ岳の山頂からは富士山の眺めが抜群に良く、ここでお昼ごはんを食べることを楽しみに登るハイカーは数知れず。休日ともなると、のんびり休憩するハイカーで大いに賑わう。

塔ノ岳のシンボル「尊仏山荘」。ファンの多い山小屋だ

 山頂は広く、腰掛けられる場所も多い。尊仏山荘という山小屋もあるため、立ち寄りで軽食を楽しむこともできる。宿泊するなら富士・伊豆・箱根、さらには相模湾が夕陽に照らされる壮大な景色や、神奈川県の街々を灯す夜景が息を飲むほど美しい。とにかく、眺めの良さなら塔ノ岳を推すハイカーは多いはず。

ふり返れば相模湾! 眼下には秦野をはじめとした神奈川の町が広がる

 登山道はよく整備されている。しかし、通称「バカ尾根」と呼ばれるほど、単調で長い大倉尾根がここの名物。お馴染み「山と高原地図」によれば、登山口となる大倉のバス停は標高290mだから、1,491mの山頂までじつに1,200mもの標高差を登ることになるわけだ。 

 これを苦手に思う人もいるようだが、晩秋から初春にかけては、多くの木々が葉を落とした明るい尾根道を歩くことができ、これが格別の気持ちよさ。見上げれば青い空が、振り返れば青い海が、視線の先には富士山があり、疲れを忘れさせてくれるほど励みになる。ただし、凍結と積雪には要注意。