四国を代表する名水であり、全国利き水大会で日本一にも輝いたこともある「うちぬき」は、西日本最高峰の石鎚山(いしづちさん)を水源とする加茂川の伏流水が自噴する湧き水だ。昔はこの自噴水を手に入れるために、人力で鉄棒を地面に打ち込み、その中へくり抜いた竹を入れていた。地面に鉄パイプを「うちぬく」と水が噴き出すというのが「うちぬき」の語源といわれている。
石鎚山系のお膝元、愛媛県西条市には約3000本の自噴井があるといわれ、一般の人も水を汲める場所がある。西条市を訪れて汲み立ての「うちぬき」を初めて飲んだときには、関東育ちの筆者は「水ってこんなに美味しいんだ!」と感激した。
日本名水百選でもある「うちぬき」の魅力、「うちぬき」をテーマにした寺院や酒など、「うちぬき」を巡る旅を紹介する。
■四国を代表する名水が気軽に飲める
石鎚山系のふもとにある西条市は「水の都」とも呼ばれ、日本でも希有な地下水の自噴地帯となっている。「うちぬき」は環境庁(現環境省)の「名水百選」や、国土庁(現国土交通省)の「水の郷」に認定され、1995年、1996年に2年連続で岐阜県で行われた全国利き水大会で日本一の美味しい水に選ばれたこともあり、その美味しさが認められている。
西条市には被圧地下水の自噴地帯が広範囲にわたって形成されており、この一帯では15~20メートルの鉄パイプを打ち込むだけで、良質かつ豊富な地下水が自然に湧き出してくる。その昔は、人力により鉄棒を地面に打ち込み、その中へくり抜いた竹を入れ、自噴する水を確保していた。この工法は、江戸時代の中頃から1940年代頃まで受け継がれてきたという 。