■初めて山小屋で過ごした連休の話

連休の夕食時はおかわりカレー皿が頭の上を舞います

 以前、鳳凰小屋が私の初めて働いた山小屋である、とお話をした。秋の連休に働いた初めての小屋もここだった。

 秋の連休といえば、一年のうちでももっとも忙しい時期のひとつ。数年前までの連休は、本館、別館と2棟ある建物のハジからハジまで、びっしりと布団を敷き詰めた。なんせ、小さな小屋に、150人ほどが泊まる。2枚のお布団に3人を案内するのだ。

 スタッフは受付に1人。もう1人は布団までのご案内。これだけ混むと快適さも便利さもないけれど、できれば女性は隣同士になるように案内したいし、できる限りのことは配慮したい。

 到着したら、ひと息入れてもらう間も受付をする。本当は温かいお茶でもお出しして、ほっとひと息入れてほしいところだけど、次から次にお客さんが到着するのだから、のんびりしていると狭い入り口が激混みになってしまう。受付を済ませてもらったら、水場、トイレ、食事の説明をしながらお布団のスペースに向かう。

 案内する私自身でさえ、お客さんがどこまで入っているかわからなくなるから、枕の上になにか目印になるようなモノを置いてもらう。帽子でもハンカチでもなんでも。今はもう考えられないけれど。

 そんな混み具合だから、寝返りしたら知らん人の顔があるし、消灯後一回トイレに出ようものなら、もう、どこが自分の場所なのかもわからなくなってしまう。小屋の中で遭難するのが、秋の連休である。たまに夕食を終えたお客さんが布団に戻れなくなって、一緒に探すこともあった。