広大な霧ヶ峰の中でも、これでもかというくらいに絶景を味わい続けられる鷲ヶ峰。後ろ髪をひかれながらその稜線を下っていくと、今度はおだやかな雰囲気に包まれた八島ヶ原湿原が、これでもかという大きさで迎え入れてくれる。

 見渡す限りの広大な湿原は鮮やかなグリーンの絨毯がびっしりと敷き詰められ、そこに水を湛えた池塘が点在している。風に水面が揺れない日なら、夏の青空と白く大きな雲がまるで鏡のように映し出され、これがまたとても美しい。ぼーっと眺めているだけでも心が洗われる風景だけれど、歩けばもっと気持ちが清らかに、楽しくなっていく。それが、ここを何度歩いても飽きない理由だったりする。

高低差ほとんどなし!  雰囲気抜群の木道散策路

夏の八島ヶ原を代表するシシウドを楽しみながら、整備された木道を歩く

 標高にしておよそ1,630mの高層湿原だから、やはり夏でも涼しく感じる。風がひんやりしているし、太陽が雲に隠れると空気がきゅっと引き締まって秋を感じる。とくにお盆を過ぎると盛夏の高原植物の賑わいは落ち着き、ウメバチソウなど秋を告げる晩夏の花々が姿を見せ始める。山はひと足早い秋の支度だ。 

貴重な木陰。日光を避けられる場所が少ないため、日傘や帽子は必須だ

 八島ヶ原湿原は木道の散策路が整備されているので、ふだん登山をしない友人や家族を避暑に誘うのにちょうどいい場所だったりする。おまけに起伏もほとんどないため、たとえば運動不足や体調を崩した後のリハビリとして歩くのにもぴったり。とはいえ、もうちょっと歩きたいという場合は、前編のように鷲ヶ峰や周辺の外輪山を組み込むことで、それなりのハイキングコースとして計画することができる、というわけだ。