■大雨がやんだ後も、登山道の崩壊や土砂災害に警戒しよう

 今回の停滞前線の特徴は、とにかく長期間、日本列島に居座るということ。気温が高い8月ということもあり、高温多湿な空気の流入によって前線の活動も活発で、広い範囲で強い雨を降らせている。今回の雨により山の土も水をたっぷりと吸って、地盤が緩むことが想定される。

 前々回の記事https://bravo-m.futabanet.jp/articles/-/120146でも書いたように、大雨の後は、登山のリスクが高くなる。近年は大雨の後に落石や土砂崩壊が起きることが増えていて、先月7月8日には、北アルプス・立山の雄山山頂付近で急斜面が崩壊し、登山道が一時通行止めになったりもしている。また、昨年7月に九州の九重(くじゅう)連山で発生した大規模な土砂災害も記憶に新しい。

 沢沿いや雪渓なども大雨の後は注意が必要な場所だ。登山を予定している方は、歩くルートの地形的な特徴を把握し、想定されるリスクに備え、安全登山を楽しんでほしい。

■夏の天気を左右する太平洋高気圧

7月16日の天気図(上)と8月8日の天気図(下)【出典=気象庁ホームページより】

 気象庁によると、前線が停滞する原因について、太平洋高気圧の勢力が弱いこと、偏西風の流れにより前線が日本列島に下がってきたことが可能性として考えられるという。太平洋高気圧は、夏の天気を見るうえで重要なポイントの一つ。高温多湿な空気を持つ太平洋高気圧は、まさに夏という季節の支配者だ。その勢力範囲によって、日本付近の天気も大きく変わってくる。

 関東甲信地方で梅雨明けした7月16日には、日本列島がすっぽりと太平洋高気圧に覆われている(上図・上)。しかしその後は高気圧は北へと偏り、8月になると東海上へとどんどん後退してしまった。そして高気圧の縁を回り込むようにして、いくつもの台風や熱帯低気圧が日本付近に北上した(上図・下)。

 太平洋高気圧の勢力が弱まり、日本がちょうど高気圧の縁に当たると、高気圧の縁を回り込んで北上する台風や暖湿流により、大雨などがもたらされやすくなる。夏に天気図を見る時は、ぜひ高気圧の勢力範囲にも注目してみよう。