夏本番、山や川、海にと、アウトドアにお出かけする機会が増えるこの季節。しかし、アウトドアでもっとも遭遇したくない気象現象が、雷やゲリラ豪雨だろう。怖い存在だが、その正体や発生のメカニズムを知ることで、適切に身を守ることができるようになる。今回は山での雷を事前に察知するためのポイントについて説明しよう。
■雷やゲリラ豪雨は「積乱雲」によって起きる
夏、アウトドアを楽しむうえで、私も雷やゲリラ豪雨にだけは遭わないよう常に気を付けている。だが、過去に何度か山で遭遇してしまったこともあり、そんな時は本当に恐ろしく、生きた心地がしない。
最初に触れておくが、「ゲリラ豪雨」という正式な気象用語はなく、これはマスコミが生み出した言葉。ごく狭い範囲で起きる、局地的な大雨のことを言う。範囲が狭すぎて予測が困難のため、突然襲ってくる様子を「ゲリラ(奇襲)」に例えて表現したものである。
つまり、雷やゲリラ豪雨は、「どこで」「どのくらいの強さで」起きるかの予測が難しい現象だ。しかし、「起きやすい状況」の予測や、観天望気によって「前兆」を察知することはできる。
結論から言ってしまえば、雷やゲリラ豪雨の予測は、「積乱雲」の発生・発達をいち早く知ることがポイントとなる。なぜなら雷もゲリラ豪雨も、積乱雲から起きるからだ。積乱雲とは、縦の方向に発達を続けた大きな雲で、「入道雲」とも呼ばれる。
積乱雲は高さが10kmを超えるようなものもあり、上の写真のように雲のてっぺんが平らになっているものは「かなとこ雲」と呼ばれる。これは雲が対流圏のてっぺんまで発達し、それ以上に発達できずに横へ広がっているためである。ちなみに、かなとこ(金床)とは、金属を鍛造するときにハンマーで叩く作業台で、形が似ているところから名づけられた。
■水蒸気をたっぷり含んだ空気が上昇すると積乱雲ができる
それでは「積乱雲」はどのようにしてできるのだろうか。それを知るために、まずは雲がどのようにでき、発達するかの仕組みをみていこう。
ちょっと難しい話になるが、上の図を見てほしい。図のように、水蒸気を含んだ空気塊が上昇すると、上空は地上付近よりも気圧が低いので、空気塊にかかる圧力が下がって膨張し、温度が低くなる(=断熱膨張と言う)。空気の温度が下がることで、飽和しきれなくなった一部の水蒸気が水滴となり、雲ができるのだ。
雲ができても、水蒸気が少なかったり、上昇流が弱かったりすれば、その雲は発達しない。積乱雲のような雲にまで発達するための条件は、雲の材料となる水蒸気がたくさんあることと、上へ上がっていくための上昇流が強いこと。つまり、「水蒸気」は雲の材料、「上昇流」は雲が発達するためのエンジンである。
なお気温が高いほど、たくさんの水蒸気を含むことができる。なので、夏には積乱雲が発達しやすい。そのほか、台風や低気圧の接近で大量の水蒸気が運ばれることもある。