■積乱雲発達の予測ポイント1「大気の状態が不安定」

大気が不安定な時は積乱雲が発達しやすい

 大気が不安定なときは積乱雲が発達しやすい。上昇流が発生しやすい条件というのは色々あるのだが、ポイントとなるのは「大気の不安定度」だ。大気は一様でなく、場所や高さによって温度が異なる。仮に、地上付近の空気が冷たく、上空の空気が暖かい場合を想定してみよう。冷たい空気は重く、暖かい空気は軽いので、こういう場合は「大気の状態が安定している」という。

 反対に、地上付近の空気が暖かく、上空の空気が冷たい場合は、暖かい(軽い)空気が下、冷たい(重い)空気が上にあるので、「大気の状態が不安定」になっている。そして上空と地上の温度差がある一定以上になり、不安定度が限界を超えると、暖かい空気が上へ、冷たい空気が下へと入れ替わる。このとき、一気に強い上昇流が発生するので、積乱雲が発達しやすい。

 大気が不安定な状態となるのは、地上付近の気温が著しく高くなるときや、上空に寒気が入ってくるときだ。天気予報で「大気が不安定になるでしょう」「上空に寒気が入るでしょう」という言葉を聞いたら、積乱雲が発達しやすいということなので、充分注意したい。

■積乱雲発達の予測ポイント2「ジメッとした空気」予測ポイント3「朝から増える積雲」

朝から積雲がもくもく湧いてくる日は注意しよう

 山は、風が斜面に当たればすぐに上昇流が発生するので、平地よりも雲が発達しやすい条件にある。大気の状態が不安定でなくても、山では時々空を見上げて、積乱雲の発生に注意してほしい。

 とくに朝から空気がジメッとして湿気が多いような日や、朝8時ごろから写真のような積雲があちこち湧いてくるような日は要注意だ。平地では夕立と言うように夕方ごろに雷雨が発生しやすいが、山では、早い時は昼頃に雷雨が発生することもある。夏山の鉄則である「早出、早着」を心掛けよう。

 遠くで発生した積乱雲が風に流されてやってくることも多い。もし、山で積乱雲が見えたら、すぐに山小屋など安全な場所に移動すること。稜線上や山頂は逃げ場も少なく無防備になりやすいので、雷や強雨に遭遇するのを絶対に避けたい場所だ。

 急に冷たく湿った風が吹いてきたり、周囲が厚い雨雲に覆われて暗くなったりするのも積乱雲の前兆。ゲリラ豪雨のような大雨に遭うと、それまで火照っていた体も一気に冷えてしまうことがある。体温が奪われないよう雨具をしっかりと着たら、近くの山小屋で様子を見る、エスケープルートで下山するなど、安全を確保しよう。その際、沢沿いや崖沿いの道は増水や崩落の危険があるので、できれば避けて通りたい。

 雷やゲリラ豪雨は、事前に予測し、適切に対処すれば防ぐことができる。むやみに恐れるのでなく、ポイントを押さえて夏の登山やアウトドアを楽しもう。