■長野県の最北西に位置する小谷村にある「栂池自然園」
標高1960〜2020mに広がるこの湿原は、今から約4万年前に白馬乗鞍岳が噴火した際にできた窪地に水が溜まり、長い年月をかけて苔が生え植物が育っていき、今の湿原を作り出したと言われています。
北アルプスがすぐ後ろにそびえることから積雪量も多く、厳冬期には4〜6mもの雪が積もるこの地域。5月下旬頃から雪解けが進み、10月下旬には雪が降り始めます。そんな厳しい環境の中、短い夏の期間に湿原で数多く咲き誇る花々。湿原という環境と標高が高いことから、実に様々な種類の植物を観察することができます。
そのような場所はアクセスにとても苦労するイメージがありますが、栂池高原スキー場の上部に位置するため、ゴンドラ&ロープウェイを乗り継いで簡単に訪れることができます。また、園内は木道が整備されており、子どもからお年寄りまで誰でも気軽に高山のハイキングを楽しめるのも魅力の一つとなっています。
■雪解けとともに姿を見せるのがミズバショウ
栂池自然園のミズバショウは、本州で最も遅咲きと言われ、6月中旬頃からピーク時には約4万株が咲き誇り、背後の北アルプスの山並みとの組み合わせはたいへん見事です。
■ミズバショウを皮切りに数多くの花が咲く栂池自然園
今年の8月一番おすすめしたいのが「ワタスゲ」です。標高1500m以上の草原や湿原で見られるカヤツリグサ科の植物。今年は当たり年のようで、湿原の中を埋めるように咲いています。
白い綿毛が印象的なワタスゲ。綿毛のときは誰でも見てわかりますが、意外と知られていないのが花の姿。綿毛のときとは違い、その地味な姿は、ほとんどの方が見落としているのではないでしょうか。出始めは黒く綿棒のような形をしていますが、次第に草丈が高くなり5cmほどまで伸びると穂先が黄色くなり開花となります。これで満開なのか? と思ってしまうような姿。ミズバショウが咲く頃と同じ時期に湿原の中でひっそりと咲いています。ふわふわの綿毛の姿も良いのですが、花の姿にもぜひ注目してあげてほしいものです。
高原の爽やかな風に揺れる可憐な姿は夏山の風物詩でもあり、夏の暑さをも忘れさせてくれるワタスゲ。
この夏は白い綿毛が揺れる気持ちのいい高原と、北アルプスの景色を合わせて、楽しみに来てみてはいかがでしょうか。