■パノラマ台からプラス30分で絶景の山頂へ

 パノラマ台の裏からついている登山道は、明神山頂上までほぼ真っ直ぐの直登ルート。非常にわかりやすい道なので、初心者でもまったく問題はない。ただし、ザレた砂礫はいささか歩きにくく、高い樹木のない山肌は太陽の強烈な陽射しを遮らない。そのため、登山靴と万が一の雨具、それと夏場なら日焼け対策はしっかりしておく必要がある。

 とはいえ、振り返れば富士山の励ましを受ける楽しいルート。歩き始めて30分もすれば、標高1291mの山頂に到着だ。

 広い山頂の中心まで来ると、石の祠が祀られていることに気がつく。これは山中湖のちょうど対岸に鎮座する山中諏訪神社の奥宮。これが山梨県側の呼称「明神山」の由来である。

 ちなみに、山頂の東半分を有する神奈川県側では「鉄砲木ノ頭」と呼ばれている。その昔、伐り出した材木を谷筋の沢を利用して麓へ下したのか、鉄砲水のような災害の記憶を後世に残すべく地名にしたものなのか、いくつか説はありそうだ。

■南アルプスが遠望できる! 四季を通じて抜群の山頂展望

 ここで、初夏と初冬の写真を比較してみたい。ほぼ同じような場所から撮影したものだ。

初夏の展望。富士山の雪が消えると、本格的な夏の到来だ
初冬の展望。遠くに南アルプスの雪稜がはっきりと見える

 これから迎える夏季は空気が霞んで遠望がきかなくなるものの、眼下の緑と夏空のコントラストによって力強い色彩を放つ。富士山の雪が次第に消えていくかわりに、夏の真っ白な雲がよく映える。

 一方で、初冬は澄んだ空気が遠望を約束してくれる。真っ白に冠雪した富士山は厳冬期に向けて神々しさが増していき、その背後に南アルプスを従えた珍しいアングルを楽しむことができるのだ。

 山の上から見下ろすと、夏空と冬空を映し出す山中湖の青さにも違いを感じるだろう。こうして比較してみると、同じ山に季節を変えて訪れる楽しさに気がつくのではないだろうか。