■悲しみの中流域
単独行とは、どんなにつらい事も楽しめてしまう生粋のマゾッ子でなくてはならないのだ、などと愚痴りながら漕いでいると空に青空が戻ってきた。
しかし、せっかく晴れたのはいいが、弟子屈市街を通るこの区間は、そこら中がコンクリートでピッシリ護岸され、用水路のようで味気なかった。源流部と湿原部の美しさだけがクローズアップされる釧路川だが、こうした開発された一面を目に焼き付けるのも旅の目的だったので、精一杯苦々しく下ってやった。
そこを越えると牧歌的な風景になってきて、上陸できそうな場所にカヌーをつけ、少しよじ登ると広い牧場が広がっていた。ようやくこの川旅で初めてテンションが上がり、「我が楽しい川旅はここから始まるのだ!」と叫び、ホクホク気分でカヌーに戻るべく草むらへジャンプしたら、右足に激痛が走った。
なんとそこには釘を打った板が釘の尖った方を上にして落ちており、右足にジャストヒット。たちまち釘が靴を貫通し、右足裏にブスリと突き刺さったのだ。
この広い北海道、この広い釧路川、何気に上陸した場所で、ピンポイントでその一点にジャンプするという運の悪さ。釘を抜くと大量の血が流れ出し、だんだん足の周りの川が朱に染まっていってさすがに焦った。ウィスキーで消毒し、タオルをキツく縛って右足を上げたままカヌーで下った。
やがて17時頃に標茶のカヌーポートに上陸。
たまたまやってた地元の祭りに参加し、散々を酒を飲み、カヌーポート付近でテント泊して長い1日を終えた。
なんだか色々辛い体験をしてしまったが、若い頃の旅では大切な経験である。
※この中流域(摩周大橋から瀬文平橋まで)は現在航行禁止となっている。詳しくは国交相のガイドラインがあるので、そちらを参考に。
■自然の色濃い湿原部
5時半出発。この日は昨日とは打って変わって、実に気持ちの良い川下りとなった。
のどかな景色の中を下っていると、2羽の丹頂鶴に出くわした。丹頂鶴は常に夫婦で行動するというのは本当で、仲良くたたずむ姿は大きく、そして美しかった。
やがて川は湿原部に入ってゆく。
すると今度は、エゾシカさんのご登場だ。
湿原部に入ってから、一気に自然が色濃くなり、同時に野生動物に出会う機会が増えた。寡黙な単独行だからこそ、野生動物との遭遇のチャンスが増えるのである。
その後も湿原独特の風景を堪能しながら進み、昼前には細岡のカヌーポートでゴール。細岡駅から電車に乗って美留和駅へ移動し、前々日にデポしておいたMTBで車へと戻った。
細岡のカヌーポートへ戻ってカヌーを回収し、そのまま細岡の展望台にて湿原を一望した。
ここは本当に超絶景だったので、ぜひ自分の目で見てきてほしいと思う。