■釧路川は川下り天国だ!
屈斜路湖を源流とする釧路川は、北海道東部を流れて太平洋に注ぐ一級河川だ。下流部には日本最大の湿原である、釧路湿原があることでも知られている。釧路川の名前の由来は、アイヌ語の「クスリ(薬・温泉)」であるとされ、その名の通り、源流域には数々の温泉が湧いている(由来には諸説あり)。
釧路川は日本屈指の川下りフィールドとしても知られ、鮎釣り師もいないため夏でも快適に下ることができる。川沿いにはJR釧網本線も走っており、旅の計画も立てやすい。しかも各ポイントには「カヌーポート」と呼ばれるカヌー発着場所が整備されていて、川下りには至れり尽くせりだ。
下れる区間としては、大きく分けて源流部と湿原部に分かれる。
当時の僕は源流から湿原部まで一気に下ったが、現在は摩周大橋から瀬文平橋までの区間が航行禁止になっているようだ(現況は国交省のガイドラインがあるのでそちらを参考に)。
禁止区間になっている中流域は、はっきりいって開発の痕跡が多くて味気ない。それは禁止になった今でも変わらないので、摩周大橋で一旦上がって、電車で標茶のカヌーポートまで移動してから再出発した方がいいだろう。
■カヌーでしか行けない絶景温泉へ!
通常、釧路川の川下りは「屈斜路湖・釧路川カヌーポート」からスタートする。しかし、寄り道が大好きな僕は、いきなり釧路川には入らない。遠回りではあるが、屈斜路湖内にある和琴半島を半周してから釧路川に入ることにした。その理由はひとつ。半島の先端に、徒歩だと行くのが困難な「オヤコツ地獄」があるからだ。
車を和琴半島湖畔キャンプ場の駐車場に置き、道具一式担いで半島の付け根の付近に移動して、6時頃にスタート。40分ほど漕いで行くと、崖の下が硫黄で黄色になってて、湯気がもくもく出てる場所に到達する。
さっそく上陸し、誰もいなかったから即座に素っ裸になり、喜び勇んで足を入れた所がなんと温泉の吹き出し口だった。右足を火傷し、その場で一人全裸でのたうち回る様は遠目で見れば変態である。
せっかくだからと、ここで荒々しい己の姿を写真に収めるべく背後にセルフタイマーをセット。そして湖に向かって全裸で両腕を突き上げてシャッター音を待っていたら、なんと岩陰から2艇のカヌー(一人は女性)が突然登場したのである。
僕もびっくりしたが、向こうは向こうで“崖を越えたら全裸のガッツポーズ男”という惨劇。とりあえず通報される前に、いそいそとパンツを穿いて再出発した。
その変態行為が釧路のカムイ(神)の怒りに触れたのか、そこからは一気に風が吹き始め、波も高くなった上に突然の大スコール。雨が湖面に当たって、跳ね返る飛沫が顔に当たるほどの勢いで、ある意味そっちの方が地獄だった。
まあそれもこれも旅の思い出である。
そんな状態で、僕は釧路川の入り口である眺湖橋をくぐって、源流区間の旅をスタートさせた。ここからやっと、約80km、1泊2日の川旅本番が始まる。
<後編へ続く>