■梅雨時の登山バス事情と酸素の薄い3,000m峰への登り

 梅雨時の北岳へのアクセスは、甲府始発の広河原行きの登山バスを使う。この時期は正直、初日に肩の小屋、もしくは北岳山荘まで上がるなら、芦安駐車場始発の5時15分発に乗り、6時過ぎに広河原に着き、歩き始めるのが現実的。次の甲府駅始発しか乗れない場合、広河原到着が11時になるため、初日は無理せずに白根御池か、広河原泊も視野に入れたい。

 この時期の北岳は、1泊2日では観察しきれないほどの高山植物が咲き誇る。贅沢をいえば、2泊3日で間ノ岳方面に足を運んでみるのもいい。

 中白根山付近にはハクサンイチゲのお花畑が広がる。のんびりと思い思いにお花畑巡りをするのが一番の楽しみ方ではないだろうか

 

中白根山付近にはハクサンイチゲのお花畑が広がる。のんびりと思い思いにお花畑巡りをするのが一番の楽しみ方ではないだろうか

■久々の3,000m峰の洗礼が待ち受ける

 歩き出してすぐに目に飛び込んでくるのは、水飛沫を上げ、山の水を勢いよく落とす大樺沢。流れに収まり切らず、川面から空へと水蒸気を上げているようで、あたり一面はムワッとした湿度を帯びている。白根御池までは森の中の急登だ。自分の汗か水蒸気か、びっしょりになった自分の身体からも蒸気が上がる。

 御池に着くと、残念ながらガスの中に北岳は隠れていた。ここから久々の3,000m峰の洗礼を受ける。草滑りの登りは酸素の薄さから、身体が重い。下ばかり見て歩いているうちに、気づけば小太郎尾根分岐に出ていた。いつの間にか雲が流れていて、どっしりとした山頂が見える。曇り空ではあるが、甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳が近い。

 足下にはハクサンイチゲやオヤマノエンドウ、イワウメが咲き、立ち止まらずにはいられない。肩の小屋手前で強風に耐え、力強く咲く花々が見事なお花畑を形成している。こちらはすっかり冷え切ってしまい、急いでダウンジャケットを着込んだ。

梅雨時の湿度は時にいい表情をしてくれる。明日の天気は晴れだろう

写真左:初夏の顔とも言える高山植物。深い紫が印象的なオヤマノエンドウ。
写真右:実は一番写真を撮ってしまうのがこれ。山の蓬はとにかく美しい