コロナ禍のいま、微妙な情勢のなかで開催されそうな東京オリンピックだが、今大会から正式採用される競技のひとつが「スポーツクライミング」だ。スポーツクライミングとは、「フリークライミング」というロッククライミングの一分野だ。ここで言う「フリー」とは「自由な」という意味ではなく「~がない、~に頼らない」と言う意味で、「登るために道具に頼らない(体重をかけない)」クライミングのことをフリークライミングと言い、困難な岩壁を人間の肉体と頭脳だけを駆使して前進する(登る)クライミングのスタイルのことをさす。

 クライミングスタイルのことを書きだすと、それだけで長い長い読み物になってしまうので、それはまたの機会に譲るが、そのフリークライミングにおいて危険要素(落石とか、落ちたら死んじゃうかもしれないようなプアなプロテクションなど)を極力排して、比較的安全な状態で登れるフリークライミングをスポーツクライミングと呼んでいる。

 さらにいろいろなルールをくっつけて、人工の壁で行なっているのが競技としてのスポーツクライミングであり、現在はロープを付けて安全を確保して登れた高さを競う「リード」と、ロープを使わずに落ちてもケガしない程度の高さの壁で短い複数の課題の完登数を競う「ボルダリング」、統一の高さの壁・ルートで登る速さを競う「スピード」の3種目からなっている。

 最近、人工の壁で登るクライミングのことを「ボルダリング」と呼んでいる人がいるが、前述したとおり、ボルダリングとはロープを使わずに登るフリー(スポーツ)クライミングのことを指すので間違いないようにしたい。ちなみにボルダリングの語源となっている「ボルダー」とは「石ころ」という意味で、「石ころで遊ぶように攀(よ)じ登る」ことからボルダリングと言うようになった。

■まずできるようになりたい「8の字結び」

 さて、今現在、日本国内にはクライミングジムが600軒以上あると言われているが、その多くがロープを使わない「ボルダリングジム」だ。ロープクライミングを行なえるジムは全体の2割にも満たないのではないだろうか?(数えたわけではないけれど……。)

 しかし、クライミングの面白さは高いところに登ることにもある。もちろん高いところに登れば危険性も増すが、自分自身で安全を確保しながら登りきり、無事に地上に降りて来られれば、その充実感や達成感はボルダリングの比ではない。そして先ほど「フリークライミングは道具に頼らないクライミング」と述べたが、墜落した時や登り終えて降りてくる時にはロープやハーネスは必要。じゃないと死んじゃう!

 そこで今回は、そのロープワークの基本中の基本、ロープを自分のハーネス(安全ベルト)にコネクトする際に用いる「8の字結び」(ダブルエイトノット)の方法を紹介します。これさえしっかり覚えていけば、初めてロープクライミングが可能なジムに行ってもスマートに始められるだろう。

 ではさっそく8の字結びを練習していきましょう!

※警告
クライミングは危険をともなう行為です。正しい知識や技術がなければ、死をともなう重大事故につながる場合があります。必ず信頼のおける指導者のもとで、正しい技術を習得する義務があります。またそれはクライマー自身のためでもあります。
なお、本サイトで記載するクライミング技術で万一事故が発生しても、本サイトの運営会社ならびに筆者および関係者は一切の責任を負えませんので、くれぐれもご注意ください。