■Skimo(スキーモ)ってどんな競技?

世界選手権の模様(2015 ISMF Verviers,Swiss)

 Skimo(スキーモ)という言葉を耳にしたことがあるだろうか? Ski Mountaineering Raceの略で、日本では山岳スキーレースと呼ばれることが多い。ヨーロッパアルプスの国境警備隊が、訓練のために始めたのがルーツとされている。ヨーロッパでは人気の高いスキー競技で、山を登って滑るスピードを競う、冬のトレランとも表現できるスポーツだ。

 主にヨーロッパを舞台に、ワールドカップや世界選手権も開催されており、草レースの数はシーズン中それこそ無数にある。三大大会(PDG、ピエラメンタ、メッツァラーマ)など、氷河を舞台に国境を越えるような長大なレースも開催されている。2020年にはスイス・ローザンヌでユースオリンピックの種目となった。ここ数年で国内でもかなり大会が開催されるようになってきている。

 山岳エリアに設定された登り下り(滑走)を含むコースを、ルールに則りスキーで周回して戻ってくるタイムを競うレースだ。基本的にはバックカントリースキーで用いる道具を使うのだが、スピードを重視しているために極限まで軽く仕上げられた、このレースに特化したものを使用する。シールを貼り付けたスキーで登り(セクションによっては背中のバックパックに装着したりもする)、シールを剥がして滑走する。途中に設けられたトランジットエリアでシールの脱着、登り下りのモードチェンジをするのだが、その作業のスムーズさも大事な要因となっており、雪上のF1とも称されている。

世界選手権で滑走する藤川健(2015 ISMF Verviers,Swiss)

■第14回山岳スキー競技日本選手権大会が、栂池高原スキー場で開催された!

広大な山岳エリアでのレースがSkimoの魅力だ

 4月3日、4日の両日で開催された山岳スキー競技日本選手権大会は、ISMF(国際山岳スキー競技連盟)の公認大会として、JMSCA(日本山岳・スポーツクライミング協会)の主催で、栂池高原スキー場にて開かれてきた。2005年の第1回大会から数えて今回で14回目。昨年はコロナの猛威のためキャンセルとなったが、厳重なコロナ対策のもと無事に開催の運びとなった。

 当初はバックカントリースキーの延長で参加する人が多かったのだが、世界選手権に出場した選手たちのフィードバックなどから競技志向が強くなり、さらにトレラン選手たちが参加するようになって、よりハイレベル化してきている。とはいえ、日本ではまだまだマイナー競技。堅苦しさはそれほどなく、真剣勝負のなかにも和気あいあいのアットホームな雰囲気が漂っている。初心者向けのコース設定もあり、参加者も小学生から還暦を越えた人まで、まさに老若男女で思い思いに楽しんでいる。

■登りオンリーで勝負のバーチカル競技!

バーチカル競技、トップでゴールする加藤淳一

 大会初日はバーチカル競技が開催された。滑走なし、ゲレンデをただひたすら登り、スピードだけを競う単純明解、ストイックすぎる種目がバーチカルだ。実は全日本選手権大会ではまだ2回目の種目。スキー場内でただ登るだけ、なので危険も少なく道具もシンプルなため初心者でも参加しやすい。初日は天候にも恵まれ、気温も程よいレース日和となった。中間駅から選手たちは一斉にスタート。標高差440mをゴール目指して駆け上がる。とはいってもペース配分は必要だ。周りの選手との駆け引きをしながら、同時に自分との闘いでもある。

 適度な距離を開けながら先頭集団が続々とゴールしていく。優勝は加藤淳一。この種目を得意とする加藤は、トレイルランナーとしても実力派。その走力を生かしてskimoにも参戦するようになり、前回大会のバーチカルでも優勝している。21分2秒というタイムで見事に連覇を達成した。

 続く2位には、島徳太郎。今大会は昨年のジュニアの部に続き2回目の参戦だ。国際自然環境アウトドア専門学校出身の彼は、スキー歴はわずか4年ながら専門学校のある妙高や白馬の山々で鍛えたスキルと類まれなる運動能力で、ここまで一気にレベルアップしてきた逸材。つい先日もその総合力を生かし、スキーでの黒部横断の最速記録を作ったばかりだ。スプリント能力と持久力も兼ね備えた将来楽しみな選手である。

女子トップの高村貴子。男子のトップ下にしっかりと食い込んでいる

 女子は、トレラン、スカイランニングのトップランナー高村貴子が危なげなく優勝した。最後にゴールラインを切ったのは小学生6年生の男子。ゴール後マイペースにスキーからシールを剥がす姿が微笑ましく、激しく順位を競うトップ選手から、健康や自身の体力測定? のために参加する選手たち。全ての参加者が同じフィールドでレースを楽しめることに、このスポーツの存在意義を見たような気がした。

バーチカル総合順位