■大分県で唯一の“サンセット”。真玉海岸の夕陽にブラボーを叫ぶ
それにしても、どうだろうこの夕陽の見事さは。当たり前のことだけれど、東に海を臨むぼくの故郷・宮城では絶対に見ることができないサンセットだ。もちろん東京でもそうだろう。
こどもの頃は、太陽は海から昇り山に沈むものだと思っていた。それが、初めて遊びに行った山形で海に沈みゆく太陽を目撃した時は、あまりの驚きに思考停止したことを覚えている。そして同時に、なにか地球の秘密を知ってしまったような気がして、心からワクワクしたのだった。
大分も東に海を臨む土地。しかしながら、この真玉海岸は大分県で唯一の「太陽が海に沈む」海岸なのである。そして、特に大潮の干潮時にできる干潟が落日に照らされる見事さは日本でも稀有。この日は水平線に落ちる直前、わき立つ雲に隠れてしまったけれど、それでも心を揺さぶられる美しさはブラボーであった。
その時、あちこちからあがる快哉に、ぼくはハッとした。潮の引く時間は日によって異なる。とすると、ここに集まった人たちはなにかで調べてやってきたのか、はたまた偶然に通りかかったのか。
もしや、猪群山の神体石の上に溜まった水の満ち引き伝承は、古代の人々が真玉海岸の干潮のタイミングを知るための術だったのではないか……。ひとり海岸でロマンチックな気持ちになりながらも、古代人だってこの夕陽見たさに必至だったのかもと想像すると、つい笑いがこみあげてしまうのだった。