■暮れゆく山里の風情、ライズを繰り返すヤマメたち

清流に磨かれたヤマメ

 午後日差しが和らぐと夕暮れの雰囲気が漂いだす。川面には虫も飛び、ライズがポツポツと増えだした。特設釣り場は17時までしか釣りができない。ここからがいい時間なので、「入渓許可証」を返して車で下流へ移動した。受付で教えていただいた村役場の前のポイントだ。まずは車道から川面を見下ろしていると、すでにライズが始まっている。

村役場の近く、住居附(スモウヅク)沢の合流付近

 そこかしこで起こるライズに合わせてドライフライを流すとパシャリと魚が出るがフッキングしない。結んだフライは#19と#21(※5)で、夕暮れどきの明るさでは僕には限界サイズだ。これ以上小さくできない。

「本当にヤマメ? ハヤじゃないの?」

 あまりにライズの数が多く、フライにかかるまでは半信半疑だったが、いったん針がかりするとグイグイと走る。手元に寄せてみると20cmあまりの美しいヤマメだった。鼻先も尖っていて精悍な面持ちだ。

勢いよくドライフライに出たヤマメ

 暗くなるにつれ、飛び交う虫たちも大型のカワゲラやトビケラが目立つようになってきた。ライズもだんだんと激しく、大胆になっていく。警戒も薄れたのか、フッキングも確実になってきた。最後に20cm後半の美形ヤマメを手にして終了とした。

 夕闇迫る河原を歩いていると、カジカガエルの優しい鳴き声が聞こえてきた。里山と渓の風情が古き良き日本を感じさせてくれる。「いつまでもこの環境が残っていてほしい」と心からそう思った。

※5 フライのフック(針)のサイズ。数が大きいほどサイズは小さくなる。同じ番号でも、フックの種類によって形状や太さなども異なるので一概にサイズだけでは判断できない部分も多い。#20くらいになると米粒程度の大きさだ。